【小説感想】魔法少女育成計画 episodesΔ / 遠藤浅蜊

 

 本編でもう死んでしまった魔法少女たちの生前のエピソードに、でももう死んじゃってるんだよな……と思うのがまほいく短編集の常な訳ですが、それにしても冒頭から幸せ夫婦をしていた頃のトップスピードの話を持ってくるのは精神的ダメージが大きくはないでしょうかね……。あんなふうに死んでいい子じゃなかったんだよ……。

話の中では、その後のテプセケメイ(正体は亀の魔法少女)の日常を描いた「正月と亀」が、ちょっとズレた視点から人間の日常を描いていて面白かったです。

それから、シリーズの中の一編としては、修羅道を歩み始めた頃のスノーホワイトの話である「魔法少女暗殺計画」が印象的。多くの友の犠牲の果てに生き残ってしまった彼女だから、そうやって生きるしか無かった。後に登場する"魔法少女狩り"としての彼女がどのようにして生まれていったかの1ページなのですが、心の中で泣いている姫河小雪を押し殺し、困っている人の心の声が聞こえる魔法を戦闘に転用して、自分よりずっと格上の魔法少女たちに狙われてもギリギリで返り討ちにしていくその姿、悲壮さと共に美しさがあるなあと思います。なんというか、この在り方が、私達の知るあのスノーホワイトさんだよな、と。

あと、東山奈央の帯コメントが完璧で、流石だと思いました。