【小説感想】ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 2,3 「case.相貌塔イゼルマ 上・下」 / TYPE-MOON・三田誠

 

 あのFate/Zeroのウェイバー君がこんな立派になってと思う訳ですが、エルメロイⅡ世というキャラクター、単純に成長したというには随分と拗れた在り方になっていて、そこが面白いなと思いました。

魔術へ精通し、研究者、講師としての特異な能力を持ちながら、魔術師としての凡庸さがもたらした捻れ。外から見た評価と自己評価の乖離。格好良さと情けなさの両面性。面倒事を引き受けては眉間に皺を寄せ、胃を痛めながら解決に導く姿。そしてそんな彼の人格を作ったのは、あの英霊との日々。このロード・エルメロイⅡ世や、彼の周りにいるライネスやグレイというキャラクターこそシリーズの魅力なのかなと。

作中でも魔術が絡む事件はフーダニットもハウダニットも推理不可と言う通り、ルールが明示されないので謎解きミステリとして読むものではない感じ。そして作中で言及されるワイダニットも1巻では魔術師の考えることなんて分からんがなと思って楽しみ方がいまいち分からなかったのですが、この2,3巻は解き明かされていく事件の真相も、個性の強い魔術師たちのキャラクターも、グレイたちの派手なバトルもバランス良く盛り込まれ、エンタメとしてとても面白かったです。

特に、追い詰められたライネスの元にやってきたエルメロイ2世が、このイゼルマで起きた事件と魔術を解体して晒していくプロセスは間違いなく謎解きであり、泥臭くも鮮やかで、そこに見える彼の特異性が面白かったなと。そりゃあ自分の家の秘術をひと目で見破って、淡々と魔術師がたくさんいる場で解説してくる奴はだいぶヤバいよなあと思います。