【映画感想】HiGH&LOW THE WORST

 

Top Down

Top Down

 

 映画が始まって「Top Down」が流れて、鳳仙と鬼邪高が並び立ったところで既に勝利を確信したのですが、その後も圧倒的な情報量とアクションシーンで駆け抜けていきました。いや、ほんと凄かった。ハイロー最高だった。コラボもハマっていたし、見たいものを100点以上で叩きつけられた感じでした。

とにかく情報量とキャラクターが多い映画なのですが、それがちゃんと噛み合っていて、誰も彼も魅力的なのが何より素晴らしいです。事前情報だと鬼邪高全日vs鳳仙学園の対抗戦が主眼のように見えるのですが、実はそれはほんの一パートであって、同時に走っている物語の数の多いこと。大まかに言っても希望ヶ丘団地幼馴染組、鬼邪高全日のトップ争い、鳳仙学園、村山たちの卒業への話といったところが並行で走って、しかも鬼邪高の中でも楓士雄の話や轟と村山の話があったりする訳で、とにかく情報量が多い。そしてそれが、またしても出回った薬物、レッドラム絡みの事件を通じて一つの物語としてまとまるし描ききるしでびっくりします。しかもアクションシーンもてんこ盛りで、軍団戦の鬼邪高全日vs鳳仙もあれば共闘の攻城戦もあり、タイマンの轟vs村山もあるってこれ2時間の映画? マジで? という感じ。それでもってバトルものとしてのパワーバランスの取り方とか、対戦カードの組み方がまた非常に上手いです。しかも、見せたいシーンを豪快に繋いでいった過去作ほど脳内で補足して! みたいな部分も少なくて、この点は過去最高の出来だったといっても良いと思います。

 

 

そんな感じで上げてもきりがないくらいに見どころ満載なのですが、色々良かった所の感想を。

楓士雄の馬鹿だけど前向きで喧嘩っ早く仲間想いっていうね、この陽のカリスマ感がとても良かったです。そりゃあ人がついていくわって思わせる存在感で演技も良かった。そして対になるかのように静のカリスマを見せる鳳仙の佐智雄も良いんですよこれが。細身ながら見せる存在感と、四天王(小沢仁志)が、明らかに佐智雄を特別だと思ってる感じとか。団地戦で沢村の血に濡れた学ラン羽織ってくのズルい。痺れた。あと、鳳仙だと小田島のビジュアルが完璧すぎて凄い。何あれ顔がいいんですけど。

それからそんな二人から比べれば人望がないのがどうしても突きつけられちゃう轟も、圧倒的な強さを見せて、楓士雄の下にはつかないけれど、ピンチの時は力を貸す実力者みたいなポジションに収まったのが納得感ありました。あんなに争っていた全日のやつらが、闘いの後で河原にたむろして部活帰りの高校生みたいな雰囲気見せてるの最高では……。あと全日だと闇討ちされた頭の傷指して狙ってこいよと啖呵切る泰志がめっちゃかっこよかったのと、ヤバイやつみたいな雰囲気出してた中越が楓士雄を見た途端にじゃれつく子犬になったのに笑いました。強面で喧嘩ばっかしてるけどやっぱこいつら10代のガキなんだよなっていうのがちょいちょい出ていて良い。

そして、そんな子供たちの物語に対比されるようにあるのが、定時というモラトリアムを過ごしていた村山の物語。この大人の世界と子供の喧嘩の線引がしっかりしているのがこの映画の特徴で、それは村山が全日と定時は分けるって宣言するところだったり、鳳仙が定時が出てきたらあんなの話は別だって言うところにも見えています。だからこそこの映画じゃメインは張れない村山なのですが、やっぱりキャラとしては完成された魅力が飛び抜けていて、全日の物語に対してはワイルドカードとしてめっちゃ良いところで顔を出すし、建設現場で働き始めるパートもこの作品における大人の世界を示すものになっていて良いです。しかもそこでオロチ兄弟と繋がって、希望ヶ丘団地組と線が引っ張られるのも上手いなあと思いました。それで最後に卒業。村山のEND OF SKYとして完璧だった……。

団地組は山王の物語をリブートするような話なのですが、やっぱり仲間の絆というところに終止するのがハイローだよなと思います。1人で問題を抱えて道を外れた仲間を、連れ戻しに行く物語。鬼邪高は不良たちの集まりなんですが、ここには絶望団地の希望と言われるエリート予備軍の誠司がいて、彼が子供の頃近所のお店で仲間たちと今は亡き婆さんによく食べさせてもらっていたキュウリになぞらえて先生に切った啖呵も良いんですよ。曲がったキュウリの話の後に、自分は誰より真っ直ぐなキュウリになってスーパーの一番いいところに並ぶんだって言う、そこだけ切り取ると何言ってるんだって話なんですが、これがね。

この映画、夢を追いかけてお天道様に恥じずに生きろっていうすごく素朴な価値観でできていると思っていて、もう全編に渡って仲間を大事にしろ、善くないことはするな、てっぺん目指せっていう感じです。喧嘩に明け暮れる不良たちも、現場で働く大人たちも、勉強に打ち込む進学生も、それはあくまで境遇であってどれが良い悪いではなく、大事なのは心なんだっていうのが、何の衒いもなくストレートに叩き込まれる感じ。だからこそ誠司が自分は楓士雄たち側ではなく自分の立ち位置で同じ心を持って闘うっていうあの啖呵に繋がるわけで。そして大人の世界のことは、村山が働きに出た大人の世界で親方が言う言葉に集約される。その真っ直ぐさをチープにさせない熱量があるし、そういう意味で善く生きようと前向きになれる物語だよなあと思いました。

あと団地組だとオロチ兄弟かっけーです。私も仲間が親の手術費で困っている時に通帳と印鑑たたきつけられる人間になりたかった。それからマドカ。ハイロー世界の女性は護られる対象だったり、逆に保護者だったりと、話の外側に置かれている印象が強かったのですが、ここにきて初めていい男たちと正面張れるいい女が出てきたっていう感じでした。そりゃあオロチ兄も惚れる。

そんな感じで見どころを上げていくと尽きないのですが、やっぱりそれはキャラクターとその関係性がどれも魅力的だからで、全員主人公を掲げたシリーズとして間違いないものになっていたと思います。最高だった!