【マンガ感想】ダンジョンの中のひと 1 / 双見酔

 

 並外れた冒険者だった父が地下ダンジョンに消えて3年。未踏の地下9階層で命をかけてモンスターと闘うクレイだったが、戦闘中に事故で壁が崩れるとモンスターは喋りだし出てきた少女はダンジョン管理者を名乗り……なんやかんやでクレイは運営側として働くことにというお話。

冒険者達が命をかけて潜るダンジョンに運営管理者がいて、いつの間にやらそちら側の人間になっちゃった冒険者のお話ですが、謎の力を持つ管理者や普通に仕事としてダンジョンで働いているモンスターたちとの話が面白いです。そう、ダンジョン運営の裏側を見ていくのも、スケルトンに入って冒険者のパーティーと闘うのも、まだ見ぬ階層のモンスターと手合わせするのも、普通にとても面白いのです。ですがこのマンガ、読んでいるとなんだか不思議な気持ちになってきます。

派手に種明かしというかネタばらしをされて、今まで命をかけてきたダンジョンがこんなにビジネスライクに運営されているという、価値観がひっくり返るような出来事があったはずなのに、クレイのスタンスがあまりにも変わらないのですよね。父親の消えた謎も依然として自分が深い階層にたどり着くことで知ろうとしてるけど、運営側で10階層のモンスターとも知り合いになっちゃった今、自力でダンジョンを踏破するって心持ち変わってこない? だとか、モンスター側は複製体で死んでも本体は無事という命のアンバランスを知っても冒険者がダンジョンで死ぬことは当たり前と思ったままなの? とか。

そういうクレイの不思議なあり方も、彼女の父親が消えた謎も、そもそも何の目的でダンジョン運営なんてしているのかも、いま時点では表層だけを見せているこの物語の先で、だんだんと繋がってくるのかなと楽しみに思います。いや、クレイは本当にただそういう人なだけという気もしなくはないのですが。

【ライブ感想】THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS Broadcast & LIVE Happy New Yell !!!

 

 まずはこの情勢の中で、配信でこれだけのライブを、当初は有観客予定だったとはいえ、通常ライブと全く変わらない規模感でやってくれたことに感謝。配信ライブはここ1年で随分見たけれど、どうしても収録の歌番組みたいになることも多いので、素敵だった和風の新規衣装もステージの作りも演出も構成も含め、ああいつものシンデレラガールズだと思える、ライブ感があるものを見せてくれたのが本当に良かったです。我々が愛したものはまだ失われていない、大丈夫って思えたことが何よりで、後はとにかく採算が取れていてくれと願うばかり。

 

新春特別ライブみたいな位置づけで、初日はとにかく面子がフレッシュだったのですが、こういうものを見るとシンデレラガールズというコンテンツの特異性を感じます。100人を超えるキャラクターに徐々に声を付けていったので、演者と楽曲に明確に世代が生まれているし、なかなか順番が回ってこないソロ曲の重みが大変な事になっているという。今新規IPを立ち上げようとしたら取られないやり方で、偶然うまく行ってしまったから諸々のデメリットも抱えながら無人の荒野を突き進むコンテンツだからこそ、あまり他で感じないようなエモさが出てくるんだなあというライブでした。

初期を象徴する曲である「ススメ☆オトメ ~jewel parade~」や、アニメとCPを象徴する曲である「GOIN'!!!」を新しい世代が並んで歌うの、ずっと追ってきた身からするとそれだけでエモいのなんのって。この新人、中堅、ベテランのバランス、なんだかもう、スポーツチームを長らく応援してきた人のような気持ちになります。いやだって、アニメメンバーを外してきた4thSSA初日に、ここが今後のシンデレラの試金石だと思ったステージに立った新人たちが今では中核ですよ、感慨深いとしか言いようがない。

そして待たされに待たされたソロ曲、どれもPと演者の強すぎるくらいの想い入れで特別になるのですが、「あらかねの器」とか「思い出じゃない今日を」のように、キャラクターのこれまでとこれからみたいな歴史まで背負わされると地面にめり込んむんじゃないかというくらいの重さがあります。ソロ曲もっと出してくれよと常々思ってはいるのですが、安売りしないからこそこの激エモなのも確かで、これも一つのシンデレラの味なのだと感じました。特に柚なあ、あんなの柚Pじゃなくても死んでしまうでしょ。

 

あと今回のライブ、配信だからこその取り組みを惜しげもなくつぎ込んできたのがこのコンテンツらしくて良かったです。遠隔サイリウム&コメントにこれでもかと繰り出されたAR映像。ARは完璧にハマっている曲から、やりすぎに感じる曲もあれば、技術的に難しいものと十分にいけるものもありましたが、とにかくまずは全部やってみようという意思が感じられて面白かったです。手裏剣が飛び交ったりアパッチに撃たれたり神殿が築かれたりウ○コが降ってきたり色々有りましたが、「世界滅亡 or KISS」のように物語表現に使うのが相性良さ目なのかなと思いました。これは本当に面白いものを見せてもらったなという感じ。

 

 あとは特に印象に残った曲の感想を。

・「命燃やして恋せよ乙女」
 和衣装ならやるでしょうという曲ですが、間奏の台詞(「~~乙女」のところ)がツボに来ました。「こずえー、おとめー?」と「今年も17歳、乙女」でオチてるのずるい。

・「Claw My Heart」
美玲のカワカッコよさここにありっていうパフォーマンスでした。素晴らし。

・「ダイアモンド・アテンション」
格好良い系統のアニソンっぽい曲、ライブ映えします。1日目はナターリアのキレ味抜群のダンス、2日目は珍しく格好良く色っぽかったほたるが印象的。

 ・「Take me☆Take you」
あかり、あきら、つかさの3人があんまり相性がいいもんだから、散々りあむがハブられてることをネタにしてきたのですが、#ユニ募3人揃ったらあまりにエモくて泣きましたね。最新世代のCu、Co、Paの3人に、ピンク、ブルー、イエローのスポットライトが降りてきて、ああそうだよこれだよってなるのはもう刻みつけられたものがある。更にこの曲というのがね……。

 ・「愛の讃歌
ありがとうぱるにゃすライブに来てくれて、桃華を愛してくれて。

・「世界滅亡 or KISS」
1日目に出現した神話ゾーンの皮切り。物語になっている曲の展開、挟まれる台詞、そしてこの長さが、ローランとしては完全に身に馴染みがあるやつで大好きです。そしてこれを喋りきって歌いきったフカガワサン凄かった。日菜子ワールド全開でした。

・「君のステージ衣装、本当は…」
歌詞があまりにもヤバい。これは本当にヤバい。花開き遠ざかっていくアイドルの姿に、仲良しだった幼馴染でも、前のプロデューサーでも、駆け出し時代のファンでも、下積み時代の同期でも、君だけの解釈で巨大感情を抱えて、激エモになろう。

・「Brand new!」
やっぱりもう曲が最高だし、3人の声のバランスも最高なんですよ。そして何より、明らかにこれまでとは違うカラーを持っている、新世代のシンデレラガールズを象徴する一曲。この曲が来て、このコンテンツ後5年は戦えると思いました。シンデレラの時計は止まらない、本当なんだなと。

・「OTAHEN アンセム
曲がとんでもないし、コールどうするんだと思ったら他のアイドルと画面がうるさいほどのAR演出で押し切るしで、夢見りあむここにありを決定づけたパフォーマンスでした。そしてこれ、やっぱり令和の「あんずのうた」だと思うんですよ。アウトローを走り続けるシンデレラガールズの魂を感じる曲です。そしてりあむの声で全くブレずに完璧に歌い踊る星希成奏が凄かった。やっぱりりあむはすげえよ。

・「青空エール
横断幕がかかりフラッグが揺れる客席を見て、晴にも見せたかったなと思いました。いや、AR演出は演者には見えないんだけどさ。

・「幸せの法則 ~ルール~」
かこほたですよ。もうね、ヤバいですね。かこほた、ステージ上でもファンの方は見ていなくて、お互いのことしか見ていないんですよ。Cメロからの向き合うところ、お互いのパートを歌うのをもう一人が見ているときの表情、最高でしたね。歌詞もね、最高なんですよ。尊かったですね。神秘的な演出も良かった。かこほたPの魂が異界送りされてると言われていましたが、さもありなん。最後のところ、コロナのせいで演者間の距離は詰められなかったけれど、私の中では抱き合う2人が克明に見えていました。幻覚じゃないよ。本当だよ。

・「躍るFLAGSHIP」
ベテラン2人の流石のパフォーマンス。好きな曲なので聞けて良かった。渕上さん、シンデレラガールとしてのライブということで、どの曲も気合が入っていました。

・「思い出じゃない今日を」
いやもうこんな曲をこのパフォーマンスで見せられたら柚Pは死んでしまうでしょう。柚Pじゃなくても、あるはずのないこれまでの思い出が走馬灯のように蘇ってくる一曲でした。泣いてしまう。

・「オタク is LOVE!」
好きなものを大声で叫ぼう! というこの曲は、190人のキャラクターがそれぞれに好きなものを掲げて正面突破を図っているシンデレラガールズの哲学だと思うところがあって好きです。エネルギー全開放っていう感じのパフォーマンスも良かった。ウサミンはこういうことをすると輝く。

【マンガ感想】めぞん一刻 1-15 / 高橋留美子

 

 電子書籍でマンガを読むようになると、場所を気にしなくて良い上に還元セール等が頻繁に実施されるので、いつか読みたいと思っていた作品のまとめ買いが捗ります。というわけで、高橋留美子は好きだけど未読だっためぞん一刻

ブコメの金字塔と呼ばれる作品だけあって、とても面白く読めました。思ったのは、ラブコメの骨子って40年(!)変わっていないのだなということ。時代背景や考え方に今見ると古いところはいくらでもありますが、勘違いすれ違い思い込み優柔不断で引き起こされる数多くのイベントの中で少しずつ関係が変わっていくところは、今に至るまで普遍的なものなのだと思いました。

そしてその展開の中心にいるのがこの作品のヒロインたる管理人さんな訳ですが、また凄いキャラクターですねこの人……。亡き夫に誓いを立てた若き未亡人で、親族から再婚を勧められても頑なに拒否するような人なのですが、じゃあ誰かに迫られても毅然としているかというと、そういう訳でもなく。アパートの入居者の五代くんと、テニス教室のコーチの三鷹さんに熱心に想いを寄せられると、拒否はしつつ否定はしないみたいな感じで、それがもうずっと続いていく。

というか、始まって数巻で五代くんのこと悪く思ってないというか、この人五代くんのことばかり考えてない? って感じなのですが、そこからが長い長い。めちゃくちゃお世話を焼くし、他の女の子と仲良くすれば猛烈に妬くけど、一定距離以上は近づかせない。そのふわっとした関係を何年も続けながら、時々ポロッと本音めいたものを出してくるの何なん。いやあんた五代くんのこと好きだよ、とりあえず付き合ってから考えてもいいじゃんと思いつつ、旦那さんのこともありそこを踏み切れないからこその14巻分約5年の時間。それにしたって2人の男性から好意を向けられる曖昧な状態を好んでいるところもあるんじゃないかなと思うところもありますし、そういう色々な感情が重層的に見え隠れするところがキャラクターの魅力に繋がっているのだと思いました。

そんな管理人さんのまじかよ! な行動は数々あるのですが、中でも旅行に行った下りは凄かった。不運なすれ違いも重なったとはいえ、数年プロポーズの返事を待たせていた三鷹さんに答えを迫られる→五代さん引き止めてと思いながら一人悩む→諸々すれ違いも重なり一人傷心旅行に旅立つ→旅先で五代さんが追いかけてきてくれたらと言い出す、はちょっと神がかったムーブでした。あと三鷹さんは常に不憫だった。惚れた女が悪かった。

そして五代くんは五代くんで浪人生→大学生→就職浪人という立場もあり、どこかふにゃっとしています。優柔不断さにあなたがそんなだからと思うことも多々ありますが、流されやすさと優しさの相乗効果で押されると断れないの、まさにラブコメ主人公! という感じもあり。でも子供にめちゃくちゃ好かれてるのを見ると、本当に良い人なんだなと思いますし、そんな五代くんだからその人はやめた方が……ともなるのですが、管理人さん、美人でスタイルよくて仕事ができて可愛げもあるので、その面倒さを差し引いても惹かれるのは、まあ分からなくもなく……みたいなところもあり。

色々とまあそんなこんなあるからこそ、二人が結ばれる15巻はもう全編ボーナスステージって感じで非常に感慨深かったです。本当に長かったよ良かったね心から良かったね幸せになってねという気持ちが作中の空気と周りのキャラクターと読者の感情で完璧にシンクロする感じ。いやもうこんなん泣くでしょう。名場面と言われるプロポーズのところも、墓前への挨拶のところも素晴らしかったです。まとめ読みでもそう思うのだから、これをリアルタイムで何年も追いかけてきた人はそりゃあ大変な感情になっただろうことは想像に難くなく、語り継がれる理由の一端を見た思いがします。

あとはサブキャラクターの立ち具合と魅力がまさしく高橋留美子っていう感じで楽しかったです。やたら人間関係が密な一刻館の住人たちもぶっ飛んでいましたし、本当にサブで出てくるようなキャラクターもいい味出していて良かった。五代のばーちゃんとあとキャバレーの先輩社員、好きです。

あと、八神いぶき好きなんですよね。五代くんの教育実習先の生徒で、実習生相手に恋愛ごっこしたくなる子供の火遊びがいつしか本気になって、でも五代くんには徹底的に迷惑な子供扱いされ続けるという。若さ故か性格故か、リスクも恥も外聞も全部を放り出してアクセルベタ踏みで迫っていく感じ、メインの二人がずっとぐだぐだしているから正反対な爽快感がありました。ちょっと勢いがありすぎてやべー女の片鱗が見え隠れしていましたが、まあそれはそれとして。

そんな彼女は去り際に管理人さんへ捨て台詞というか、痛烈なdisを残していくのですが、これがなかなかスッキリくるものがあって好きです。あと同じく管理人さんへの朱美さんのラスト近くでのdisは更にキレがあって凄かった。そう思うに、やっぱり個人的に好きだろうが嫌いだろうが、このめぞん一刻という作品は、管理人さんに尽きるんだよなあと思います。

2020年の5作(マンガ)

電子書籍の便利さが分かってきて、色々とまとめ読みもした1年でした。紙の書籍だと置く場所が……となっても、電子ならどれだけ買ってもでも大丈夫。あと何だかんだ少年ジャンプって面白いなと思った1年でもあります。

 

BURN THE WITCH / 久保帯人

BURN THE WITCH 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

BURN THE WITCH 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 読み切りから待ちわびた本連載。好き。ただただ好き。

【マンガ感想】BURN THE WITCH 1 / 久保帯人 - FULL MOON PRAYER

 

鬼滅の刃 / 吾峠呼世晴

鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックスDIGITAL)

鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

やっぱり流行るものには流行るだけの面白さがあるんだなあと感じた鬼滅。一番好きなのは童磨戦。蝶屋敷組の闘いは哀しみと儚さの中に折れぬ強さがあって良い。

【マンガ感想】鬼滅の刃 1-23 / 吾峠呼世晴 - FULL MOON PRAYER

 

葬送のフリーレン / 山田鐘人・アベツカサ

 これもやはり流行るものには流行るだけの面白さが。かつて勇者一行として旅した道程に長命種は何を見つめるのかという過去への視点を軸にしながら、今と未来への目線も確かにあるのが良いなと思います。

 

とある科学の超電磁砲外伝 アストラル・バディ /  鎌池和馬・乃木康仁

 今年完結。かつて能力開発の研究施設で育った女の子たちの間の、才能格差とこじれにこじれた巨大感情の物語。良き。

【マンガ感想】とある科学の超電磁砲外伝 アストラル・バディ 1-3 / 鎌池和馬・乃木康仁 - FULL MOON PRAYER

【マンガ感想】とある科学の超電磁砲 外伝 アストラル・バディ 4 / 鎌池和馬・乃木康仁 - FULL MOON PRAYER

 

 虚構推理 / 城平京・片瀬茶柴

 いやー可愛かったですね雪女。お幸せに。 

【マンガ感想】虚構推理 13 / 城平京・片瀬茶柴 - FULL MOON PRAYER

 

2020年の6作(小説)

通勤時間がなくなるとこんなに小説を読まなくなるとは思いませんでしたねと……。来年は家でもっと小説を読む習慣をつけることです。

 

ツインスター・サイクロン・ランナウェイ / 小川一水

 めちゃくちゃ出来の良いSFアニメ映画を見たような読後感のあるハイスピード宇宙漁業百合SFエンタメ。最高に面白いです。

【小説感想】ツインスター・サイクロン・ランナウェイ / 小川一水 - FULL MOON PRAYER

 

恋に至る病 / 斜線堂有紀

恋に至る病 (メディアワークス文庫)

恋に至る病 (メディアワークス文庫)

 

 狂っていく、沈んでいく、地獄へと落ちていく。寄河景という存在が放つ引力。

【小説感想】恋に至る病 / 斜線堂有紀 - FULL MOON PRAYER

 

タイタン / 野崎まど

タイタン

タイタン

 

 AIが人間の仕事を代替した時代に、仕事を放棄したAIをカウンセリングするという斜め上の出発点から、世界規模おねショタグレートジャーニーが展開する、野崎まどの展開力に押し流されます。

【小説感想】タイタン / 野崎まど - FULL MOON PRAYER

 

りゅうおうのおしごと! 12 / 白鳥士郎

りゅうおうのおしごと!12 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと!12 (GA文庫)

 

 将棋と将棋星人に恋をした女の子が挑む三段リーグという修羅の世界、その決着。人間たちの壮絶な闘いの物語は、浪花ど根性人情将棋小説の真骨頂でした。

【小説感想】りゅうおうのおしごと! 12 / 白鳥士郎 - FULL MOON PRAYER

 

安達としまむら 9 / 入間人間

安達としまむら9 (電撃文庫)

安達としまむら9 (電撃文庫)

 

 入間人間の百合は「エンドブルー」「佐伯沙弥香について」も良かったですが、この巻の日野と永藤の話はキレキレ具合はちょっと凄いなと。

【小説感想】安達としまむら 9 / 入間人間 - FULL MOON PRAYER

 

推し、燃ゆ / 宇佐見りん

推し、燃ゆ

推し、燃ゆ

 

 「推しって何?」と聞かれたら自信を持って差し出せる一冊。その救いも、その業も、ここに。

【小説感想】推し、燃ゆ / 宇佐見りん - FULL MOON PRAYER

2020年の振り返り

コロナで何も変わってしまった2020年。ライブ/イベントに週1以上のペースで行って、楽しみも友人に会うことも全てがそこにあった日常が唐突に消え、そしてそのまま戻ってこない1年でした。続々と始まった配信ライブももちろん良いけれど、現地には現地だけの魅力があって、それが失われたことはやっぱりショックも大きくて。そしてそれは、きっと来年も、もしかしたら二度と戻らないかもしれないのかもなと。

そんな中でどうしていくのかを考えざるを得ない状況ではありますが、新しいものに手を出すことは減ったものの、相変わらず趣味に生きていることは変わりない。そんな2020年の振り返りを、別エントリで書くつもりの小説とマンガ以外で。

 

 

アイドルマスターシンデレラガールズ

2月に滑り込みで開催された7th大阪ドーム公演。初の生バンドでの単独ライブが最高に楽しかったことはこの先もずっと覚えているだろう思い出になりました。本当にシンプルに最高だった。

そして今年は推しの供給がヤバかった一年。何はさておきビートシューターのユニット曲&デレスレイベントが来たこと、感慨深くて、もうね。的場梨沙は他にもオウムアムアイベントに2枚目SSR、U149のお当番シリーズに24時間放送でのライブ初披露、しんげきえくすて本編&ED曲とボイス前ならありえない勢いの供給があって、ただただ噛みしめるような1年でした。それもこれも9位には入れなかったけれど、10位に入った昨年の総選挙のおかげな訳で、本当に良かったなと……。

あとこのイラストで私は死んだ。ありがとう廾之先生。

 来年は1月にリスアニライブでビートシューター出演で何かもうゴールしそうな感がでてきておりますが、ももぺあべりーのユニット曲とライラさんへのボイス実装も諦めずにいたいと思います。あと、年始は飛んでしまった有観客ライブも、いつかできると良いねえ……。

 

プリンセスコネクトRe:Dive

相変わらず毎日触っているプリコネ。今年は何よりもアニメ化の成功に尽きる1年だったなと思います。

プリンセスコネクト! Re:Dive 4 [Blu-ray]

プリンセスコネクト! Re:Dive 4 [Blu-ray]

  • 発売日: 2020/11/06
  • メディア: Blu-ray
 

このすばの監督がそのノリを持ち込んだ作風、ゲームとは違うストーリーを美食殿+主人公の4人をメインに他はゲストキャラとした割切り、記憶をなくした主人公を可愛いキャラクターとして描くというウルトラCの全てがハマって、贔屓目抜きでも面白いアニメになっていたなと。2期も楽しみ。

ゲーム本編の方は第2部ストーリーが進んでいるところ。なんだか真っ当に面白いのですが、第1部の持っていたピーキーさが無くなったのはちょっと寂しさもあり。あの日日日らしい狂い方が好きだった。

 

十三機兵防衛圏

十三機兵防衛圏 - PS4

十三機兵防衛圏 - PS4

  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: Video Game
 

 数多くのキャラクター、時間軸が絡み合い、複雑に編み上げられたストーリーを、プレイヤーごとの切り口で解釈していくという、無ニの体験が味わえたゲームでした。

こういうことなのでは……? えっ何これ全然意味わからない? マジかーそう言うことか……! あたりの感情を行ったり来たりして進める手が止まらなくなるというのは、本当に特別な体験だったなと。

 

BanG Dream!

バンドリ全体というかRAISE A SUILENの話になりますが、きちんとバンドリ世界のキャラクターになっていった1年だったなと思います。

アニメ3rdシーズン、まさかの舞台、そしてガルパ実装まで、RASの結成にまつわるエピソードを何度も何度も繰り返す描き出すことによって、キャラ無しのバックバンドからスタートした演者とキャラクターが一つになっていく過程が見れたのは、他のコンテンツでは見たことのない面白いものが見れたなと。あとチュチュが好きなんですよね、自分だけの世界を抗って闘ってる感じ。そしてそれが5人の闘いになるストーリーが良かった。

ERA【Blu-ray付生産限定盤】

ERA【Blu-ray付生産限定盤】

  • アーティスト:RAISE A SUILEN
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: CD
 

そしてそれを受けてのライブ、まさにバンドリというコンテンツの1バンドとしてのRASが確立されたパフォーマンスだったと思います。来年は生で見たい。

 

リングフィットアドベンチャー

リングフィット アドベンチャー -Switch

リングフィット アドベンチャー -Switch

  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: Video Game
 

 今までの人生で、筋トレも運動も何一つ続いたことがなかった人間が、2月の購入から今までほぼ毎日、毎日20分程度ですが続いているというのが、もうありえないことであり、このゲームの圧倒的価値です。なんであれ続かなければ意味がないのだから、これはもうゲーミフィケーションの勝利。ありがとう任天堂、これがなかったらリモートワークの日々は致命的な運動不足に陥っていたに違いない。

 

新日本プロレス

大多数のスポーツイベントもいったん動きを止めた1年でしたが、だからこそスポーツを見られることがどれだけ楽しみになっていたのかを再開された野球やF1を見ながら思ったし、そういう苦境だからこそ、その状況すら物語に取り込んで続いていくのがプロレスであるんだよなと思います。開催できなかった期間、声を出せない状況でも対策を万全にして続けた有観客興行、来日できない外国人選手も多い中でも展開された数々の闘いを新日本プロレスワールドの配信で見れたことが、救いになっていた部分はすごく多かったなあと思います。

試合の方はタイチが本当にプロレスの上手いヘビー級レスラーになったなあという感じで好き。ザックとのタッグも良き。来年はいまだに何なんだかよくわからないTHE EMPIREの動きと、IWGPヘビーチャンピオンとしての飯伏の姿が見られることを期待しています。

あと、毎週30分のテレビ放送が始まったので女子プロレスのスターダムも見始めたのですが、これが結構面白いです。ジュリアvs中野たむ、情念の闘いっていう感じで凄まじかった。

 

音楽

今年の1曲なら「リテラチュア」だし、今年の1枚なら「Empathy」というくらい、上田麗奈のアーティスト活動が印象的でした。声優が音楽活動をすることに、すべての曲を演技として表現するという一つの答えを聞かせてくれる楽曲たち、素敵でした。

Empathy

Empathy

  • アーティスト:上田麗奈
  • 発売日: 2020/03/18
  • メディア: CD
 

 

今年は大橋彩香の「WINGS」、ナナヲアカリの「七転七起」と好きなアーティストの成長と変化を感じられる新アルバムが出たことも嬉しかったです。ナナヲアカリの「Higer's High」なんて、ダメ天使からこんな覚悟と決意の曲が出てくるなんて思わないじゃないですか。ああなるほど、ああいうところからスタートした人たちが、こうなっていくのかという面白さ。

SUPER BEAVERにハマったのも今年。JAPAN JAMが中止になったときに配信された過去ライブ映像で見て惹かれて、メジャー再デビューの波に乗ったという感じ。活動も長く、酸いも甘いも味わった上で、それでもこのストレートなメッセージを衒いもなく放てるというのは、すごい強さで、だからこその輝きがあると感じます。本当に「ハイライト」がめちゃめちゃ良い曲で。

あと岸田教団&The明星ロケッツの「nameless story」がとある科学の超電磁砲のEDだったのですが、もう本当に食蜂操祈の曲でしかなくて、アニメを見たあとにフルで聞くと泣きそうになるのは、まさにアニソンの強さだったなと。

それからキャラソンではMashumairesh!!の「キミのラプソディー」がこの言葉、この真っ直ぐさという感じで良かった。設定上の作詞がマシマヒメコでこの歌詞はあかんでしょっていう。

ストレイライトの「Hide & Attack」もこのキャラクターだからこそのこの言葉、この曲調というのが良き楽曲でした。冬優子にサビでソロを取らせるのそこ! って。シャニマスは「Dye the sky.」も力と覚悟を感じて良かった。アイマスだとシンデレラの「Brand new! 」がまさしく新時代を感じさせるメンバーと曲になっていて素晴らしかったです。

あとは電音部の黒鉄たまいただきバベル」があまりにも趣味にストライクで最高でした。女性声優のラップだとヒプマイの「Femme Fatale」もReolの曲をドスの利いた声で歌いこなす小林ゆうに痺れました。

 

アニメ

いや、「ハイキュー!!」めちゃくちゃ面白いですね。すごい、試合して無くても面白いし、試合してるともう最高に面白い。これ以上はないじゃないって感じだったのに、原作読者に次の音駒戦はもっと凄いと聞いたので、早く次のクールを作ってくれと願うばかりです。

イエスタデイをうたって」は冬目景の原作が大好きなので、まさか今になって、しかもこんなクオリティでアニメ化されるなんて感無量でした。ハルが素晴らしく可愛かった。

原作ファンとしてという意味では「虚構推理」もおひいさまがおひいさまをしていて良かった。二期も楽しみ。そして「安達としまむら」もまさかのこのタイミングで、しかもあんな地の文メインの繊細な関係性の表現で成立した百合ものをと思ったのですが、モノローグとイメージ映像で素晴らしいアニメ化されていて大変に良かったです。伊藤美来しまむら、最高の演技だったと思います。2期をくれ。あの電話の流れが見たいんじゃ。

魔女の旅々」は硬軟織り交ぜたクソみたいな話というか、本当に糞みたいな話……っていうシリアスと、馬鹿話のコンビネーションが楽しいアニメ。イレイナさんが本当に良い性格していて好きでした。下品と可愛いは両立すると証明した「おちこぼれフルーツタルト」の、やらしくならないギリギリのラインをちょっと踏み越えたところでバランスを取り続ける感じも面白かったです。

あと「とある科学の超電磁砲T」は高値安定で、食蜂操祈が好きなので本当にもう大変良かったです。泣いた。アストラル・バディのアニメ化も頼む。

それから「ID : INVADED」、舞城作品がまさしく舞城作品としてアニメ化されているの、凄いなこれって思いました。ツダケンの演技もとても良かった。

映画では、「メイドインアビス-深き魂の黎明- 」が本当に度し難い話が完璧に映像化されていて、こう、なんだ。プルシュカ……。「Fate/stay night [Heaven's Feel] Ⅲ.spring song.」はなるほどこうなるのかっていう。桜、好きです。そしてEDで流れる「春はゆく」が沁みる。梶浦由記の音楽繋がりでは「鬼滅の刃 無限列車編」もあの話の後に流れ始める「炎」がヤバすぎました。レコード大賞、おめでとうございます。

【小説感想】こわれたせかいのむこうがわ 2 ~少女たちのサバイバル起業術~ / 陸道烈夏

 

 1巻がディストピア国家からの脱出するところまでを描いていたので、その続きと言っても何をするんだろうと思ったのですが、いやこれ2巻の方が全然面白いです。むしろ本領発揮という感じ。抑圧された世界を描くよりも、開けた世界でヤバい奴らが景気よく闘っていたほうが、文章も物語も生き生きするタイプの作家なのだと感じます。

独裁国家チオウから脱出したフウとカザクラですが、逃げ延びたアマクニで今度は謎の組織ゴトクテンの長であるリリに捉えられて、奴隷扱いされる生活からまた脱出、そして橋の上に気づかれた都市アマテラスでの全面対決まで一気に駆け抜ける一冊。

とにかくぶっ飛んだキャラクターや組織が一から十まで大仰でケレン全振りという感じ。そして細かいことは気にするなと言わんばかりの語りの勢いが読んでいて気持ち良いです。過剰なまでのフックでずっと飽きさせずに引っ張っていくのは、小説というか、口頭で語る物語を浴びているような感覚があります。

とはいえハチャメチャにドンパチするだけではなく、前巻ではラジオから知識を得て窮地を抜け出したフウが、今度は手にした情報をどう見極めていくかという壁を仲間の力で超えていくところだったり、悪を自認するリリにも彼女の確固とした組織運営術があったり、地に足のついた話を織り交ぜるのが面白いバランスだなと思います。

新キャラもなかなか強烈な人が多いですが、拉致した人々を洗脳して支配する、組織のために必要であれば人命すら、それどころか長というパーツとしての自分の身さえも顧みないリリ・陽天の在り方が良かったなと。生来持った真面目さと狂気に理不尽な境遇が合わさった結果が行き過ぎて、「虚」と「悪」を自認する姿、割と好きです。そしてそんなリリと、目的のためにやっぱり何も顧みないところがあるフウの類似性が示唆されるの、超えてはならない一線のあちら側とこちら側のようで面白いなと思いました。いや、フウが超えていないかというと、そこに若干の疑念は、無くもないですが。

そしてそんな少女たちが組織と軍事力を率いて正面衝突するのだから、それはイかれた大騒ぎにもなりますし、そこでなんだかよくわからない奴らが大激突しつつ、最後はご都合過ぎるくらいの大団円にもっていくパワーがある物語ならば、そんなの面白くない訳がないじゃないと。大変楽しかったです。

ただ、帯に「少女たちの可愛い生存戦略」とあるのは若干の詐欺なのでは。この生存戦略、どこかに可愛さあったかな……。