ひかりのまち / 長谷川昌史

ひかりのまち―nerim’s note (電撃文庫)

前半は良いんだけど…。
日黒期や天文がらみの設定とか、微妙な距離感の人間関係とか、文章の感じからくる、物語全体を包むうすぼんやりとした雰囲気はかなり好みです。街に隠された「本当のこと」を探そうとする失踪した兄と政治家の父を持つ少年と、兄について何か知ってるらしい謎の女性の交流と徐々に明らかになる真実という話として良い感じ。なにより、読んでるときのなめらかな感覚がすごく良いです。…なんですが、後半がなぁ。
とりあえず、駆け足過ぎで詰め込みすぎで読者が完全に置いてけぼりな気がするのは、さすがに私の気のせいじゃないような。話筋はよく分からないし、キャラクター達の思考もよく分からないのに、キャラクター達だけで納得されてぐんぐん話を進められても読んでるほうとしては訳が分からなくなってしまいます。書きたいことや話のアイデアがたくさんあるのはわかるのですが、もう少し物語として昇華させてから書いて欲しかった気が。そして散々引っ張った「本当のこと」は一人のキャラクターがクライマックスで一から十まで延々と語ってしまうってのは構成としてどうなのか。どうにも、突然打ち切りの決まったマンガが無理やり一気に伏線を回収してしまったような、そんな強引な感じです。
雰囲気やキャラクターは良いと思うので、この人ちゃんと腰を据えてある程度の長さのあるシリーズ物を書いたらもっといいものができるのではないでしょうか。
落ち着いた雰囲気のイラストは好み。ラノベのイラストもこのくらい落ち着いた感じのほうが良いと思うのですけどね。
満足度：D+