空の境界 / 奈須きのこ

空の境界 上  (講談社ノベルス)

空の境界 上 (講談社ノベルス)

空の境界 下 (講談社ノベルス)

空の境界 下 (講談社ノベルス)

やっと読み終わりました。
とりあえず長かったです。読んでも読んでも読み終わらないったらありゃしないです。これが同人から出てきたっていうのは確かにすごいなと思います。そういう、一種の凄みというか勢いの感じられる小説です。ただ、興味深いって感じではあっても素直に面白いっていう感じでは無いかも。
読み初めは文章の読みにくさが気になりました。全編で展開される奈須哲学的な思想と相まって酷く難解な印象。時系列がシャッフルされてる事や、視点が飛ぶのも分かりにくくしてる要因としてはあるのですが、それよりも、もっと簡単な表現があるのにわざと小難しくしてるような印象があります。この言い回しに中毒性があるのは分かるのですが。上巻の途中までは、正直読むのを止めようかと思ってましたが、そこからは文章もだんだん読みやすくなってきて面白かったです。話筋はあらゆるモノの死が視える少女式を中心にした異常能力者による不可思議な事件を巡るもの。式が記憶を失って目覚めるところから、一話完結で過去の事件の真相と現在の事件について徐々に明らかになる感じ。話の運び方はちょっと荒っぽい気がします。やや荒唐無稽が過ぎる感じ。矛盾螺旋とかそれはそれで面白いですけど。燈子さんが格好いいですし。
全体通して特徴的に感じたのは、多重人格の式の人格とか、非日常と日常とか、普通と異常とか、生きることと死ぬこととか、そういうものの持ってる意味がことごとく無意味なものにされてるなということ。特に序盤は激しく空虚。その空虚さに話が進むにしたがって色がついていく感じです。そして、最終的にはボーイミーツガールなラブストーリー。結局は空虚な世界に色がつく話なのかもしれないです。あと、この人の小説がファウストに載るのは自然な流れだなぁとか感じました。モチーフとか概念とかちょこちょことソレっぽいです。
満足度:B-