ラッシュライフ / 伊坂幸太郎

ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)

快作!
軽快軽妙テンポ良し。スピード感たっぷりに5つの物語を平行して展開しています。会話も機知に飛んでて良い感じ。よく考えるとぶっ飛んだ登場人物がぶっ飛んだことをしてるんですが、なんかあんまし気にしないでサクサク読めます。
物語は泥棒の男黒澤と父親に自殺され宗教的なものにはまる男河原崎と不倫相手の妻を殺そうと企む女京子と失業中の男豊田の話が中心で、それと画家の志奈子の話がちょっと。最初はあんまし関係がなさそうで、なんでわざわざこんなに混乱するような読み方をさせるのかと思っていたものが、最終的に一つの見取り図に収束していく様は実に巧いです。一つ一つの行動やキーアイテムが、パズルのピースのようにあるべき場所に収まって一枚の絵になるのが快感。スカッとします。こんな繋がりが!的な気持ちの良い驚き。
それぞれ話の中では失業者豊田が野良の老犬と拳銃を拾ってしまって繰り広げる物語が素敵。自意識過剰になって被害妄想になったり、老犬の様子に勇気付けられたり、とんでもないことをしようとしたりしながら、立ち直り人生に立ち向かって良く様子が良いです。最後の戸田との話はベタですけど格好よかったです。
殺人とか犯罪とか大量に起こってますが、あんまし深く考えないでスカッと爽快な読後感を味わえました。スタイリッシュ。面白かった。これは他の作品も読まなくては。
満足度:A