スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐 / マシュー・ストーヴァー

スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐 (ソニー・マガジンズ文庫―Lucas books)

スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐 (ソニー・マガジンズ文庫―Lucas books)

なかなか読みごたえがありました。割と字が小さい上に550ページもあるもんだから。映画がものすごい勢いで駆け抜けるような感じだっただけに、飛ばされた(映画のつくりとしては正しいと思いますが)心理描写や、背景設定などの細かい部分を丁寧に書き込んで行ったらここまでの分量になったという感じ。
エピソード3の前に他のエピソードは出揃っていて、ここまでの流れもここからの流れも分かってるのに、これだけ面白くできるのだからすごいと思います。ダース・ヴェイダーと帝国の誕生とジェダイと共和国の壊滅という悲劇。全てわかってたことなのに、過程を突きつけられると痛切です。
内容はまさに盛りだくさん。最初からアナキンはかなり不安定な感じなのですが、その辺の不安定さが全て人間らしい感情から来てるのがなんとも。ジェダイカウンシルとパルパティーン議長の対立が表面化するにしたがって、オビ=ワンへの信頼やジェダイの教えとパルパティーンへの信頼や彼の言葉の板ばさみにあって苦悩するアナキン。さらに愛するパドメが死ぬ予知夢を見て、それを救う力はシスにしかないと議長に言われたり、自分をマスターにしてくれないカウンシルに不信感を持ったり。パルパティ−ンとの関係やオビ=ワンとの関係が丁寧に書き込まれていて、さらにジェダイや共和国、議長や議員たちの政治的だったり信念だったりする意図が複雑に絡み合ってアナキンを縛り付けていく様が丹念に描写されます。そして終盤は正体を表わすパルパティーンに塔が崩れるように堕ちていくアナキン。アクション部分は映画と比べるまでもありませんが、登場人物それぞれの心理描写や政治的な企みの数々、交錯する意図といったものが映画を補完するような意味でもよく書かれていて、よりスター・ウォーズが楽しめるノベライズだと思います。アナキンを中心に据えて読まなくても十分楽しめます。
シスの考え方というのは「悪」の単純な一言で片付けられるのか? ジェダイのあり方は「善」なのか? といろいろ考えさせられる点もあります。人間らしさが感じられるのはむしろシスのほうという。オビ=ワンやヨーダの超然とした感じはむしろ人間らしくないです。こういうことも考慮に入れた上でもう一度映画を見るといろいろ印象が変わってくるかもしれません。
蛇足ですがR2-D2は萌えキャラでした。
満足度:A-