『ギロチン城』殺人事件 / 北山猛邦

『ギロチン城』殺人事件 (講談社ノベルス)

『ギロチン城』殺人事件 (講談社ノベルス)

なんというか歪な感じが否めないです。
幻想的な雰囲気と、ミステリの部分がいまいちマッチしていないような印象を受けました。外界から断絶された城。人形と人間の差異。奇妙な住人達。処刑具のコレクション。首狩り人形の伝説と儀式。終末の予感。こんな要素が並んでいて、どこか儚い印象を受ける文章からは繊細で幻想的なイメージを受けるのですが、トリックの下地を作ってる部分やトリック自体が、そこから浮いてしまって何か別のものが合わさってるかのような印象を受けます。名前の記号性とか、探偵という存在について、大掛かりな仕掛といった要素くらいまでは馴染んでると思いますが、そこに妙に現実的なロジックを導入したり、明らかにトリックのためにだけ用意された設定が出たりすると、なにか違和感を感じました。それぞれの要素が上手く溶け合っていないような。この雰囲気は好きなだけに、ちょっともったいないかなという気がしました。
トリックはさすがなのか。バカバカしいほど大仰で嘘くさいトリックですが、ありはあり。もう一つのトリックもしてやられました。
キャラクターは記号的にしてあるというか名前がもはや数字になっています。そこから人形と人間は何が違うのかというテーマに持って行っているのだから見事なのか。さすがにYOUとIのトリックはびっくりしましたが、これもテーマ上ありな気がしますし。
どうでもいいことですが、雪と共に脱出しようとするあたりで何かICOを思い出しました。雰囲気が。
満足度:B