赤×ピンク / 桜庭一樹

赤×ピンク (ファミ通文庫)

赤×ピンク (ファミ通文庫)

桜庭一樹の転換点といわれる小説です。
ライトノベルレーベル? 砂糖菓子や推定少女よりもむしろこれが当時ファミ通文庫として世に出たことのほうが不思議です。
内容はなんともいい難い感じ。とらえどころがないです。廃校となった小学校校舎で夜行われるキャットファイト。そこに出場する三人の少女。一人は子供っぽい躁鬱少女、もう一人はSMの女王様、最後の一人は女性恐怖症。少し筒重なりながら、それぞれの視点から語られる物語は、ひたすらに続く痛々しい内面吐露。そしてつつけば崩れそうな危うげな関係性。少女を取り巻く親とか愛情とか性とか何かそういうその他諸々を、思いつくままに詰め込んで、それがひたすらに登場人物の言葉として綴られるようなイメージ。全体としては何がいいたいのかわからないような、イマイチはっきりとしたとらえどころのない小説なのですが、気だるげで行き場のない空気と、気持ちの切実さだけははっきりと伝わってきて、読んでいて辛くなったり、涙が出そうになったり。実になんともいえない小説です。
桜庭一樹が書き続けている少女達を描いた小説の原型のようなものが、ちらほら見えるので、確かにここが桜庭一樹のターニングポイントだったのかも。それ以前の作品を読んでいないので明言はできませんけど。
満足度:A