紅 / 片山憲太郎

紅 (集英社スーパーダッシュ文庫)

紅 (集英社スーパーダッシュ文庫)

あー、これは面白い。
キャラクターとその配置、設定といったところにどうしても戯言シリーズの後半を感じてしまうのはどうしようも無いので許してください。だって紅い人は絶対だし、アパートにエキセントリックな連中が集まってるし、主人公の周りがなぜか女性だらけだし。
話は駆け出しの揉め事処理屋をやっている高校生紅真九郎のもとに、世界屈指の大財閥である九鳳院家の娘、紫を守って欲しいという依頼が入ったところから始まります。話としてはこの二人がメインですが、幼なじみの情報屋とか、適当な感じのお隣さんとか、昔の居候先のお姉さん的存在とか、狙い済ましたような女性キャラクターが大量に投入。そもそも紫の生意気だけど甘えん坊みたいなキャラも狙い済ました感がありますが、その辺はあまり気にならない感じに話に馴染んでます。
話を構成するそれぞれの要素要素は珍しいものではないし、心に傷を負った青年と何も知らないお嬢様が心を通わせ、お互いに過去を乗り越え成長する物語といえば非常にベタな話なのではありますが、そんなことを感じさせない吸引力が素敵でした。突然の別れからの後半の展開は熱い熱い。
全体的に理不尽な暴力やどうしようもないこと、歪んだ犯罪や心理みたいな、人間や社会の闇を真っ向から描いていて、雰囲気は暗いしやるせなさを感じるのですが、だからこそその中でも貫こうとする意志が輝いてます。
誰が正しいとも言い難い面もありますが、

「人生には無数の選択肢がある。が、正しい選択肢なんてもんはない。選んだ後で、それを正しいものにしていくんだ」
「・・・・・・前向きですね」
「後ろに何がある?」

のやりとりが全てを語っている気がします。
紫は非常に魅力的。中盤でデレに転じてからは本当に可愛いです。
電波的な彼女のほうも読んでみるかなぁ。
満足度:A