スパイラル〜推理の絆〜 15巻 / 城平京・水野英多

完結。私の中で一つの時代が終わりました。
結局は絶望的な状況を前に全てを無に帰す運命を描いた兄と、それでも希望を繋ごうとする弟の対決に収束。どんなに不確定で不安で絶望的な状況でも、諦めないで希望をつないでいくことが大事という少年マンガらしい帰結だと思います。火澄編以降は話がやたらメタで抽象的になって、少年マンガらしくなくなっていたので。歩が全ての絶望を背負って立っている様は悲壮で怖いものがありましたが。
鳴海清隆という神の位置にいる人物が描いた運命の中で操られ踊らされ続けるの歩やブレードチルドレンたちを延々と描いてきた訳ですが、そのそれぞれの視点で持っている情報量の違いで、その状況の構図が全然違うように見えているというのが面白かったです。それによってキャラクター達の行動が変わってくるわけですが、それもまた一番上にいる清隆の描いたシナリオどおりだという訳で。運命の描き方は強引だったり、話自体も時々訳が分からなくなったりしていましたが、面白いマンガでした。個人的にはクライマックスでもうひと盛り上がり欲しかった感じがしますが、本誌で先に読んでしまっていたので驚きが少なかっただけという感じもします。

この作品の不幸なところは、vs理央までの1〜3巻ほどが全然面白くなく、しかもその面白くない部分にやっぱり面白くないオリジナルシナリオを乗っけてアニメ化されたことではないかと。やや冗長でしたがカノン編や、その後の読者置き去り気味の怒涛の展開は、辻褄があってるのか怪しく感じることもありましたが非常に面白かったです。まぁ、そこまでで挫折した人が多そうなのですが。
今後はスパイラル・アライヴが連載再開ということですが、本編が完結した上で一体何をするのでしょうか。個人的にはどちらかというと城平京の小説が読みたいです。満足度は色々思い入れ込みで。
満足度:A+

以下ネタばれあり。

「結崎ひよの」の扱いに関しては批判が集まるところなのでしょうが、個人的にはこれがベストかと。ひよのがシナリオから浮いていて何か仕掛けがあるのだろうとは読めていましたが、歩にとっての最後の拠り所だという描写を執拗に重ねた上での、ラストのどんでん返しはなかなかキツイものがありました。しかしまぁ、作者が書いているとおり「結崎ひよの」という都合のよすぎるキャラクターとしてではなく、しっかりと彼女として歩と向き合ったという意味でこの結末は良かったと思います。それでも残ったものの繋がるものもあるという描き方が素敵です。やっぱり「彼女」がスパイラルで一番好きなキャラクターだったのは変わりませんでした。
最後に清隆に言った

「――はい。あんたなんか、だいっきらいです」

が素敵過ぎました。