ももんち / 冬目景

ビッグコミックスピリッツ読みきり40ページ。
最近の冬目作品の中ではベストの出来なんではないかと思います。その位よかったです。まず、カラーの見開きでグッとつかまれました。そんな感じで、この人の場合は絵だけで8割方満足できてしまうのですが、この読みきりは話もなかなか。
おっとりした美術予備校に通いだしたばかりの女の子ももを主人公に、家族の絆と小さな恋と自立を描いた話なのですが、過不足なくきっちりまとまっていていい感じです。複雑な家庭事情でもさらっと描いて見せる辺りが素敵。ちょっとだけ変わってる部分を見せるラストも綺麗です。
なにより雰囲気がいいです。ももがおっとりしているのもあるのですが、作品全体をほわほわした優しい空気が包んでいて大変心地良いです。その割に話自体はきっちり地に足がついているので理想郷のお話にならずに、余計に幸せな感じ。心理描写も丁寧ですし。個人的には絶賛していいかなぁと。ももはとんでもなく可愛いですし。ひーっとなってる顔が可愛らしい。
冬目景羊のうたやZEROのような切迫感や疎外感といった負のエネルギーに溢れた尖った作品を描く人だと思っていたのですが、この作品を読むに作者自身が余裕ができたのか丸くなったのか、今ならこういう雰囲気の作品ほうが全然合ってるような気がしました。シリーズ化があるかもとのことですが、もっと読みたい気持ちとこれ以上描き散らさないでほしいという気持ちが半々。微妙なところです。
満足度:A+