狼と香辛料 / 支倉凍砂

狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)

ホロとロレンスの関係を楽しむお話でした。
中世ヨーロッパみたいな感じの世界を舞台に、行商人として大分様になってきたところの行商人ロレンスが、豊穣の狼神の化身である少女ホロを拾うと言う話で、後は二人の旅の描写と、大きな商売に首を突っ込んだ奮闘記になっています。
世界そのものの描写も、主役二人の人物描写もきっちりしていて薄っぺらい感じがしないのが好印象。行商人の苦労話や貨幣に関する商売の話もしっかり。主役の二人では何百年も生きてきた賢狼であるホロが、ロレンスを手玉に取ってる様が楽しいです。それでいて時々子供っぽいところを見せたり、孤独の重さに耐えかねてたりするホロはかなり魅力的なキャラクター。

「なに、気にすることはない。雄どもは皆阿呆の焼き餅焼きじゃからの」
「ただな、雌もそんなことが嬉しい阿呆じゃからの。どこを見ても阿呆ばかりじゃ」

「孤独は死にいたる病じゃ。十分釣りあう」

とかここらへんのセリフが素敵です。
ただ、全体的に地味でやや冗長な感じでもうひとつ盛り上がりに欠けるかなぁという気はします。後半大規模な商売に首を突っ込んでからの展開はもっとスリリングになるんじゃないかなと。
それでもなんとなく信頼しあってるような二人の関係を見てるだけで、のんびり幸な気分になれる小説でした。
満足度:B