熊の場所 / 舞城王太郎

熊の場所 (講談社文庫)

熊の場所 (講談社文庫)

舞城王太郎の小説は正直好きではありません。この文庫も発売当初に買って今まで積んでいましたし、読み出してからもこれだけ薄いものを何日もかけて読んでいるんだからその点は間違いないような気がします。
ただ、それでも何かあるような、読まなければいけないような気にさせるのがこの人のすごいところ。佐藤友哉が大好きで西尾維新も好きで、舞城王太郎を読まないとバランスが悪いような気がする……というのはきっと建前で、なにか大事なものがここにあるような気がしてるというのが実際のところ。自分にとっての宿題みたいな作家さんになっています。
そんな短編集。熊の場所はよくわからなかったのですが、バット男とピコーン!は面白かったです。ひたすら混沌としていた煙か土か食い物などに比べるとテーマがすっきりしてずっとわかりやすくなっているような気もするのですが、それでも何かイマイチつかみきれないです。
この人の作品に感じるのはものすごい生っぽさ。理論で構築された世界でもなく、情念に訴える訳でもなく、もっともっと根源的に生の部分に何かを訴えてくるようなそんな印象。そしてそれ自身にすごく生に対して肯定的なイメージを感じます。この短編も恐怖や弱者のあがきやどうしようもなさを描いてるのに、伝わってくるのは生きることの強さ。そういう部分がこの人の魅力で人気の源なんだと思いました。
満足度:B