SHI−NO -シノ-アリスの子守唄 / 上月雨音

ロリコンミステリー。
大学生の僕と小学生の志乃ちゃんの純愛系の物語らしいです。まぁそれは置いておいて、前作に比べてもずいぶん真っ当にミステリしてます。難解なトリックのような複雑なものもサプライズ的な要素も出てきませんが、それでも構成がきっちりしていて十分普通に面白かったです。
話筋としては、現代の小学校の「惨殺アリス」という怪談に悩まされる児童からの相談を受け、その怪談を調べ始めた僕と鴻池先輩が怪談について調べるうちに、10年前にその小学校で起こった教師殺害事件と怪談のリンクに気がついてという内容。怪談に苦しむ児童の悩み相談や、怪談の謎を解き明かそうとする捜査的なことは大人二人が行なうのですが、殺人事件という部分に関しては解決編は志乃ちゃんの独壇場。そして何よりこの物語独自の魅力は、この志乃ちゃんと言うキャラクターにあると思います。
鴻池先輩や僕が社会的倫理にのっとった思考をするとすれば、志乃ちゃんは完全に社会的な倫理観に対して無頓着な印象。猟奇的な事件にふらふらと惹かれていって、そしてそこに首を突っ込んで解決するというのが彼女の行動パターンであり、感情すらほとんど表に出さない彼女の唯一能動的にとる行動です。この猟奇的なものへの傾倒が、そのまま志乃というキャラクターの特異性にして危なっかしさにしてミステリアスな魅力。だからこの先のシリーズでの注目は志乃ちゃんが首を突っ込む事件そのものではなく、志乃ちゃん自身がそちら側に行ってしまうかどうか、そして僕はその志乃ちゃんにに対して保護者としてどう接していけるのかという点だと思います。その意味でこれは探偵役の支倉志乃というキャラクターに焦点を当てたキャラクター小説なんだなと思いました。
ただ、面白いには面白いんですがどうも文章が読んでて肌に合わないのがなんとも。青いというか若いというかなんと言うか細かい部分がいろいろ粗い印象があります。雰囲気としては嫌いじゃないだけにちょっと惜しいです。後何作か出て、もう少し洗練されてくれると嬉しいです。それからキャラ付けがというのではなくて、地の文が素でロリコンっぽいような感じを受けるのは私だけでしょうか。
満足度:B+