ダ・ヴィンチ・コード 上中下 / ダン・ブラウン

ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(中) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(中) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(下) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(下) (角川文庫)

読み終わったーっ。これで流行にバッチリ乗ったぜ。
そんな訳でダヴィンチコード。小説としてみるとあまり出来がいいものとは思えないというか、極々普通なのですが、この小説がこれだけ売れるのはやはりキリスト教に深めに切り込んだテーマ設定と数々の薀蓄の魅力かなと思います。
ルーブル美術館館長ジャック・ソニエールの奇怪な死から幕を明ける物語は、濡れ衣で容疑者とされた象徴学者ラングドンとソニエールの孫で暗号捜査官ソフィーが、警察に追われる等危険が迫る→ソニエールの残した暗号を解く→次の場所へ逃げるというワンセットの繰り返し。他の要素も絡んできますが、基本はこの繰り返しなので結構単調。スピード感はあるのでそこまで退屈ではありませんが、物語としてはこのページ数にしたら相当に薄いです。この1/3でも多いくらい。
ただ、この小説が楽しいのはキリスト教にまつわる謎が、ソニエールの暗号を一つ解くたびに膨大な薀蓄とともに明らかにされるところ。暗号自体は英語であることが前提のためにちょっと楽しめませんが、キリスト教話はなかなか興味深いです。惜しむらくは連日のようにやっていたダヴィンチコード特集番組で結構なネタばれをされてしまっていたことでしょうか。この小説自体が要するに解説本と一緒なので、内容に触れたからネタばれと言うのはおかしいのですが。
ただ、キリスト教圏の人たちが読んだら感じるであろう、自分の信じるものが足場から崩れるような感覚は感じられるべくもないことがちょっと残念。あくまで第3者として客観的に見る事しかできないので、面白い話以上のものにはなりえなかったです。
しかし、シオン修道会からオプスデイ、バチカンまで様々なキリスト教周辺の様々な考え方に触れながら、物語的にはあくまで中立の立場を守って「こういう考えもあるんだよ」という論点提示にとどめているのは見事としか言い様がないです。触れると爆発する地雷地帯を敵を作らずに駆け抜ける巧妙さ。これがベストセラーたる所以か。それでも一部地域では見事に爆発しているようですが……。
しかしこの話のテーマはダヴィンチじゃなくて聖杯なんだから、このタイトルはどうかと思うのですが。
満足度:B