- 作者: 桂遊生丸,Key
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/07/06
- メディア: コミック
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原作未プレイ。アニメ未試聴。
観鈴という不幸なお姫様の所に往人という王子様がやってくるスタンダードな話として1巻を読んでいたものだから、この展開は置いてけぼりでした。王子様がお姫様のために献身して、お姫様が救われてめでたしめでたしならわかりやすいんですが、その後親子愛の話に急速にスライドしていくのが良くわからないです。あれ、王子様の出番お終い? みたいな。お姫様が救われる感動話なのは間違いないと思うのですが、終盤の展開はちょっと不思議。いつまでも末永く幸せに暮らしていく相手は義理の母って往人があまりに報われないのでは……。或いは救った気になってとっとと退場してしまう無責任。まぁ、観鈴の物語としてみれば、往人と出会うことで苦難を乗り越え、大切なものを手に入れて新しい一歩を踏み出した物語として全然おかしくない気はするのですけど。
あと感じたのは、徹底した物語の抽象化。観鈴は難病のヒロインなのですが、そこで重要なのは過剰なまでのセンチメンタルさで、彼女を蝕むものは「夢」という漠然としたものでしかないし、往人が母親から聞かされて追いかけるものもまた抽象的。切なく感傷的な心理描写のためだけに存在するようなストーリーと設定は、セカイ系作品よりももっとずっといろいろなものを捨象している気がします。そういう意味での抽象度では童話的なのですが、童話にしては心理描写が濃いです。その辺の不思議なバランスはこれはこれで結構いいのかも。ただ、汚いものをすべて排除した綺麗な話に、何か奇妙な感じを覚えたのも確かなところです。
桂遊生丸の絵はやっぱり好み。最初は頭の弱い子だなぁと思っていた観鈴も最後まで読むと普通に可愛く思えました。往人とのカップルは魅力的です。
満足度:B