"文学少女"と死にたがりの道化 / 野村美月

ライトノベルらしいライトノベルで、非常に良くできていると思います。
マンガっぽいキャラクターとか、崩した文章とか、どことなく漂う軽い雰囲気とか、そういう部分で私は今ライトノベルを読んでいるんだなぁと感じることしきりでした。どうもラノベと言われて私がパッと思い浮かべるのはこういう雰囲気らしいです。
ただ、それだけじゃなく話のほうもなかなか良くできています。太宰治人間失格をネタにして、学園内で存在しない先輩と、その先輩が好きで手紙を送りたいという少女竹田さん、そしてその手紙の代筆を頼まれた主人公心葉と文芸部の先輩で本を食べちゃうお化けの遠子先輩。そんなキャラクター達をメインに進む物語は、一体何がどうなってるんだか分からないなかなかミステリアスな展開で、先が読めずにかなり面白かったです。挿入される太宰を下敷きにしたような手紙とか、様々な謎がきっちり最後には回収されのが素晴らしいです。存在しない先輩がらみの事件はちょっとさっくり片付けすぎな気もしますが、これ以上ここに分量を使うとバランスが崩れるだろうと思うので適当なのかも。ラストは予想外な展開からしっかり盛り上がって良かったです。あの鬱々しい人間失格をきっちりテーマとして使って、それでいて前向きな結末を迎える辺り、本当に良くできているなぁと思います。
覆面美少女ベストセラー作家だった心葉の過去や琴吹さんがらみの話などまだまだ色々な話が出てきそうなので8月に出るらしい続巻にも期待大です。この巻は人間失格を読んでおいた方が楽しめたので、次回もまずは扱われている本を読まないと。
あと、イラストがとても綺麗で繊細で大好きです。遠子先輩魅力的。軽くて読みやすく、分量も短めで、でも内容はストーリーもキャラの魅力もしっかり。そしてオマケに古典(と言うほど古くも無いですが)への興味まで喚起しちゃうと言う、非常にバランスの良いライトノベルだと思います。小中校生位が読むと良さそうと思いました。
満足度:A-