最終兵器彼女 外伝集 / 高橋しん

なんというか、ジャンル「高橋しん」という感じ。
最終兵器彼女きみのカケラといった作品もそうなのですが、読んで受けた感覚を言葉にすることが難しいです。なんだか凄いとは思うのですが、何が凄いのか、何が面白いのかと言われると、「う〜ん」と唸ってしまうような感じです。言葉にならない感情と感覚が表現されているような。絵も構図も語り口も独特のセンスが炸裂しているので読み手は選びそうです。
サイカノの外伝集ということで3篇の短編を収録。時間軸的には戦争の始まり、戦争の最中、戦争の後という三つです。サイカノの場合ちせという存在がそのまま世界の命運に直結していたのでセカイ系の代表作品のように言われていましたが、こうやってその部分が欠けたものを読んでも受ける印象が大きく変わるわけではないというのは、結局高橋しんが描きたかったのは極限状況での人間であり恋愛であり希望と絶望だったのだなと感じます。他は全てそういったものを強化するための舞台設定の一種だったのだろうと。内容は「それぞれの話では世界の果てにはきみとふたりで。あの星が消えるまでに願いを。せめて僕らが生き延びるために。この星で。」は微妙な感じでしたが、「LOVE STORY,KILLED.」と「STAR CHILD」は良かったです。特に「LOVE STORY,KILLED.」の戦時下のどうしようもなく行き詰った感じは、救いはないのですが、好みです。「STAR CHILD」は世界が滅んでしまった後の、生命の強さの物語か。どちらも一瞬の感情が繊細で鋭利なのがはっとさせられます。
きみのカケラは原稿料ももらわずにまだ描き続けてるようですし、高橋しんの作品はまだ楽しめそうです。しかし、描きたいものを描きたいように描くというこのスタンスを商業作家としてどこまで維持できるのかは少し心配な気がします。
満足度:B+