増殖フェティシズム / きづきあきら

増殖フェティシズム (ガムコミックスプラス)

きづきあきらのマンガは人の心理を率直に巧みに描いているようでいて、実のところかなり歪ませているのではないかなぁと感じました。そういう気持ち悪さが確かにマンガの中にあるような気がします。
この単行本はフェティシズムの話と言いながら、大体は身勝手な恋愛感情の話。相手を「幸せにしたい」と言いながら、結局のところ自分が幸せになることを考えてるような。恋愛感情なんて自分勝手なものだといってしまえばそれまでですが、ここまであからさまに描かれるとちょっと読んでいて苦しいです。
収録作の中では「春にして君を想う」と「おくるコトバ」が好みでした。春にして〜は彼女の中では自分を玩具にして何かを失った物語なのでしょうが、結局遊ばれた少年が哀れ。おくるコトバは去りゆく先輩に送る言葉として選んだこの言葉のアイデアの勝利という感じです。こういう好きの形もありか。
満足度：B