本格推理委員会 / 日向まさみち

本格推理委員会 (角川文庫)

本格推理委員会 (角川文庫)

やりたいことは分かるんですが。
学園を舞台に、ミステリとキャラクター小説を青春ものの上で走らせた感じ。主人公が本格推理委員会という奇妙な委員会に巻き込まれて、小学部で発生した幽霊騒動の謎に関わることになる話です。そしてキャラクターには兄には明るいところを見せる人見知りの妹、ガサツな関西弁幼なじみをはじめとして、強引な先生などかなり狙った造形。ただ、それっぽい記号を並べただけという感もあって、ちょっと違和感も感じます。
そして、これだけの要素で行くとのんびりとした話のようですが、その実は結構痛さのある青春もの。過去の失敗から前に進めなくなった主人公を中心に、事件を軸として色々な人の感情が渦巻いています。ただ、このタイプの後ろ向き系主人公を最近受け付けなくなったのか、どうにも読んでいてイライラしました。後ろ向きであることよりも、それに対してグダグダと言い訳することが腹立たしいのか。小説全体を見ても、どうにもぎこちない感じで、要素要素は悪くないけどなんだか上手くハマっていないという感じを受けました。
ただ、キャラ要素や青春要素ばかり気にしていたら、ミステリの仕掛けには全然気がつきませんでした。良く考えると、きっちりとヒントは出てるのでちょっと悔しいものが。あと、「過去の失敗」だとか「名探偵であること」というテーマに対して、あの事実を持ってくるのはちょっと逃げてるのかなと思いました。主人公にとってそれが逃げ道として機能していたのはわかるのですが、そこと向かい合う物語も読みたかったかなと。
満足度:B-