魔法先生ネギま! 17巻 / 赤松健

魔法先生ネギま!(17) (講談社コミックス)

魔法先生ネギま!(17) (講談社コミックス)

「僕は 僕自身の日常のために
 悪を行なう それを逃れることはできないのだと」

これは凄い。非常に面白かったです。
もうずっと続いていた学園祭編のvs超クライマックス。絵も話も設定も何をどこからどうしたら良いのかわからないほどの密度の高さで、週刊連載とは思えないくらいです。
この巻はラブコメ分はなくって基本的にバトル路線。延々と学園全体を巻き込んだvs超戦なのですが、スピード感とテンションの高さで飽きさせません。演出から何から、ストーリーへの吸引力が素晴らしいです。特に、これだけたくさんのキャラクターがこれだけ大規模な戦闘を繰り広げているのを、それぞれの見せ場をきっちり作って描ききったのはもう感嘆するしか。中盤のネギを進めるために犠牲になる仲間達はバトルマンガの典型パターンですが、これだけのものを見せられたら燃えます。
ラストのネギvs超はクライマックスの名に恥じない派手さと、信念のぶつかり合いで良かったです。ずっと迷っていたネギの決心を固めるに至った夕映との会話をバトルの合間にさしはさむのがまた巧い。しかしながら、この決断もこの想いも10歳に背負い込ませるものではない気も。まぁ、そんなことは置いておいても、このネギの成長というものが、広げるだけ風呂敷を広げた物語に確かな軸を通しています。
ネギまは、ハーレムラブコメの形で始まって、様々なオタクガジェットの集積でここまで来たように思っているのですが、ここに来てついにバトルマンガというものを飲み込んだなぁという印象。しかもそれをこれだけのレベルで消化してしまうのだから、赤松スタジオの力はとんでもないものがあると思いました。正義とか悪とか、闘う理由とか重いテーマも絡めつつ、それでも内向きに入っていくことはしないで、エンターテイメントとしてのバランスを保つ感覚が素敵。
これだけ話を広げた以上、どこかに突っ込みどころや矛盾もあるのでしょうが、そんなことは全然気にさせない勢いがありました。さて、次の巻では超編と学園祭の後始末だとして、今後はどんな話にもって行くのか。ラブコメ分の補給も入るでしょうが、本筋はサウザンドマスターにまつわる謎かな。
満足度:A+