えむえむっ! / 松野秋鳴

えむえむっ! (MF文庫J)

えむえむっ! (MF文庫J)

カラッと読めて、しっかり楽しいライトノベルらしい小説でした。
基本的には第2ボランティア部という願い事をかなえてくれる部活を中心に、主人公含め色々な人の願いが交錯するような感じの話なのですが、特徴的なのはどのキャラも極端なキャラ付けが施されていること。主人公は真性マゾで女の子に罵られたり蹴られたりすると快感を感じる変態さんで、第2ボランティア部の石動先輩は自称神様の傍若無人の権化のようや美少女。そして太郎の母姉は近親相姦どんとこいな太郎大好きぷりで大変。さらにネタバレの都合で伏せますが、他のキャラも揃って変なのばかり。そんなことだから、ドMをなおしてもらいに第2ボランティア部の門を叩いた主人公の太郎はなんだか訳の分からんことに巻き込まれて痛い目にあったりと大変なことに。しかしそれでも喜ぶのがマゾなのでした。
そんな感じでキャラクターのトンデモさと軽快な会話で引っ張っていく話なのですが、第2話なんかは話も中々。トラウマから心を閉ざした少女を救おうと頑張る主人公なんてそんな王道も良いところな話も、しっかり描いてそこに強烈なキャラクターによる賑やかさが加われば古びた感じもなく面白いです。太郎と結野のお互い抱えた悩みゆえのなんだか変な距離感と、それが縮まっていく様子がまた良い感じ。少しづつ心を開いていく結野は可愛いです。そしてそれを見守る先輩も根は良い人だしで、キワモノ的なキャラ配置に反して、中身は真っ直ぐで温かい話なのがバランスが良いのかなと思いました。変態方面はあくまでアクセントであって、本質はこっちであるからこそのすっきりした読後感なのでしょうし。
読んでいて楽しく、全体として十分満足でしたけど、続きを積極的に読もうと言う気がするものでも無いというのがなんとも。文章やキャラの方向も含めて、軽い小説という感じでした。
満足度:B+