冬の巨人 / 古橋秀之

冬の巨人 (徳間デュアル文庫)

冬の巨人 (徳間デュアル文庫)

世界設定もその表現もキャラクターも魅力的なのですが、ちょっと分量が足りないのかなと。
一面の雪原が広がる世界で、歩み続ける巨人の背中に作られた街で暮らす少年オーリャの物語。天球と外市街の暮らし向きの違い。巨人を中心に対する信仰と、それとは違う真実を追いかけるオーリャの師であるディエーニン教授。雲の上、冬の果て、世界の終わりを説く終末党。オーリャが出会う議員の娘であるジェーニャという少女、そして謎を秘めたレーナという少女。なんだかそういう要素要素は非常に魅力的。冷めた雰囲気で淡々した語り口も雰囲気が良く出ています。
ただ、なんというか溜めが足りないというか、どこかノりきれなかったというのが正直な所。気球のシーンなんかは凄く引き込まれるものがあったのですが、基本的に展開が早くて、しかも淡々としているものだから、なんだかこの魅力的な世界に浸りきれなかった感じです。
本当に世界観は魅力的だっただけに、ちょっともったいないかなぁという印象でした。
満足度:C+