青年のための読書クラブ / 桜庭一樹

青年のための読書クラブ

青年のための読書クラブ

これまでも少女を描き続けていた桜庭一樹の新刊は、東京の女学園を舞台にした物語。読書クラブの部員たちの手によって書き残された学園の裏の歴史を読む形で、100年の歴史を追います。時代の流れの中で、そこからのかすかな影響を受けながら、特別な空間であり続けた乙女の園でのいくつかの事件を描く連作短編集。
少女というテーマは桜庭作品では描き続けられているものですが、同じテーマとは言いながらも少しづつ描き方が変わってくるのがすごい。今回は女学園という純粋な空間の中で、甘さと残酷さや柔らかさと鋭さ、夢見がちと現実の匂いといった相反したものを併せ持つ少女の世界が、とりとめのないふわふわ漂うもののように浮かび上がってきています。「サムワン」である青年を求め、その青年もまた少女が演じるという完結性がありながら、ミシェールの話などを通じて青年という存在を少女とどこか通じるものとして描いてあるのが面白いと思いました。この少女という存在は、肉体に縛られるものでもありながら、ある種の精神性でもあるのかなと。だからこそ、どこまで年をとっても、読書クラブ員は読書クラブ員であり続けるのでしょうし。そしてその描かれ方の、「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」や「少女には向かない職業」と比べて、どんなにか肯定的であることか。
あとは、読書クラブという異端者の目を通して描かれるというのが、桜庭作品らしいなと思いました。読書クラブによって書き残された古めかしい文体と、自分のことを「ぼく」と呼び気取った言い回しをする少女たちの言葉が、この世界をある種装飾して純化して、この作品の掴みどころのない雰囲気を作っているのだと思いました。
話の中では、マリアナの秘密に迫る第二章が面白かったです。そんな秘密があったなんて!
満足度:A−