神様のメモ帳2 / 杉井光

神様のメモ帳〈2〉 (電撃文庫)

神様のメモ帳〈2〉 (電撃文庫)

爽快感は限りなくゼロに近いですが、このぼやぼやとした感触は面白いです。
まっとうな社会から外れた人々の織りなす物語で、雰囲気はけだるく全編通じてダウナー。自分の無力さに悩み続ける主人公の鳴海や、「ニート探偵」たるのアリスが囚われている悲壮な想い。そして持ち込まれる事件の後味の悪さ。ただ、それでも、思いを通そうとする人々の力が少しでも救いを呼び込めるなら、みたいな感じの話。
暴力団関係の企業、風俗で働く東南アジアからの出稼ぎ労働者、謎の2億円を持ち込んだ少女といった社会の暗部を描きながら、小説的、あるいはライトノベル的な展開とキャラクターで暗すぎないぎりぎりのラインを突くバランス感覚が素晴らしいなと思いました。ほろ苦さを残しつつ、自分たちが動いたからこそ最悪の結果ではないという前向きさ。
それにしても、鳴海はモテモテですね。アリスからメオから依林さんに4代目まで恐ろしい勢いで人から好かれまくりなのが不思議なくらい。そして4代目の漢っぷりは格好よすぎました。アリスといい、メオといい、作品全体から受けるぼんやりした雰囲気からは意外なくらいキャラクターが立っていて魅力的。
あと、イラストが素敵。読んでいて受けるイメージ通りというのもありますが、なによりメオが可愛いすぎました。
満足度:A−