NHKにようこそ! 08 / 滝本竜彦・大岩ケンヂ

NHKにようこそ! 8 (角川コミックス・エース 98-12)

NHKにようこそ! 8 (角川コミックス・エース 98-12)

「私、強い子になりたかったよ……。神様にも負けないぐらいに強くなって、どんなに寂しくてもひとりで生きてゆける子になりたかったよ!」

完結。答えなんか見つからない。
「生きる意味は? 目的は? 手段は?」と問いを立ててはみるものの、逆立ちしてもそんなものは見つからずに、とりあえずテンションを上げて全部笑い飛ばそうとするんだけれども、やっぱり最後は逃げ切れなくなってぐだぐだぐだぐだ、みたいな。人とのつながりを求めてみました、恋人を探してみました、もう死にます、薬に頼ってみました、革命を起こします、一攫千金を目指します、世界の敵を探します。何も依るところがないから何かを探してみて探してみて探してみて、それでもどこまでも空っぽで、でも死ぬことなんかできやしないという、出口のなさが痛々しいです。その痛々しさを上手い具合に自虐的なハイテンションギャグに昇華していたのが序盤だったのですが、途中から文字通り追いつかれて飲みこまれたような感じになりました。でもこれはこれで、必死で切実で、キャラクターには共感できて、凹むけど面白い。
滝本竜彦作品はこんなような問題を考え続けているイメージがあって、小説版は「人と人の繋がり」みたいなところに着地、「超人計画」はどこにも着地できずに、じゃあマンガ版はどこに落とすのかなと思ったら、あとがきでも触れられているように「自分自身の意志を持とう!」みたいな「真っ当」な所に落ち着きました。これ以上どうしようもないというか、そう簡単には割り切れないけど、それでも割り切っちゃうしかないという、なんかもうどうしようもないよね的な。
なんだかんだ言っても、このキャラクター達の言ってることややってることが少しでも分かってしまって鬱になる辺りで、私はこの作品からは逃れられないような気がするのでした。
満足度:A−