アマデウスの詩、謳え敗者の王 黄昏色の詠使い3 / 細音啓

もともと面白かったものが、さらに化けたという幸福。
1、2巻は設定、キャラクター、ストーリー、設定、そして何よりも雰囲気が素晴らしかったのですが、話の運びの荒っぽさなども感じられました。ただ、ここにきてそういった粗を感じた部分は影をひそめ、さらにストーリーもスケールを増してより魅力的に。正直、これは文句のつけどころがありません。
灰色名詠と謎の襲撃者、そして夜色名詠を創りあげたイブマリーとその息子のネイト、虹色のカインツ、緋色の少女クルーエルと彼女に秘められた謎。名詠をめぐる物語は、キャラクターたちを緩やかに結びつけながら、より深いところへと。あまりにもできすぎた生徒の配置が、しかしここにきて意味を持ちはじめてくるあたり、巧いと思います。
学園への襲撃という事態の中での、クルーエルとネイト、そしてミオの間にある信頼の強さにはちょっとグっとくるものが。この奇麗な雰囲気の中では、この真っすぐさがたまりません。クルーエルとネイトの2人は、私の中でベストカップルへの道を急上昇中。一生懸命な少年と、お姉さん役の少女がお互いにお互いを守ろうとしてるあたりにもう悶えるしか。ラストシーンは反則。
動き出した<イ短調>という異端者達の組織、深まる名詠の謎に、いまだ謎に包まれた敵、ネイトとクルーエルのこれからと気になることが目一杯。話し的にはまだこれから盛り上がるところだというのだから、これはもう楽しみに待つしかないじゃないですか。
満足度:A