ミステリクロノ / 久住四季

ミステリクロノ (電撃文庫)

ミステリクロノ (電撃文庫)

トリックスターズ久住四季最新作。
今作でもライトノベルらしさとミステリらしさを上手い具合に両立させていてなかなか。
遙海慧の元に、天使を名乗る少女阿部真理亜が現れて始まる物語。天使という時間の枠組みの外にいた存在、そして時間を操るクロノグラフという道具。そのクロノグラフが7つ散乱した街と、それを回収しないと人間として生き続けなければならない真理亜。慧は今まで天使だったために何も知らない真理亜を匿い、クロノグラフ探しを手伝います。その過程で持ち去られた真理亜の持っていたクロノグラフ「リザレクター」を奪った犯人は誰なのかという感じ。
慧と真理亜のボーイミーツガールな雰囲気を漂わせますが、真理亜が今まで天使だったために本当に何も知らず、中身は完全に幼児であるというのが特徴的。時間という縛りに苦しみ、人間の悪意にあてられて、人間なんて嫌だと言う真理亜と、それでも人間を信じて欲しいと願う慧というちょっと変わった二人の関係になっています。人間であることに肯定的だったり、信頼の絆とかそういうものが描かれていて、なんだかんだで真っ直ぐな物語を描く作者だと再確認したり。
ミステリ的には小粒ですが、きちんと楽しませてくれた印象。今回は世界観やキャラクターの説明にページを割きすぎていた印象があるので、こういった部分はこの先もっと楽しみにしてもいいかなと。クロノグラフの数が増えるにつれて、ルールが複雑になって行くでしょうし。
とにもかくにもこの巻ではまだまだ序章という感じ。魅力的な設定ではあると思うので、今後の展開に期待です。あと、ぜひトリスタ2部もお願いします。
満足度:B+