とらドラ5! / 竹宮ゆゆこ

とらドラ! (5) (電撃文庫 た 20-8)

とらドラ! (5) (電撃文庫 た 20-8)

青春万歳。
とらドラ5巻は、大河の父親がやってくる話と文化祭の話。大河の父親が大河と一緒に暮らしたいと告げることから、竜児は素直になれない大河をなんとか父親と仲直りさせようとしてという感じの話ですが、私は竹宮ゆゆこのシリアスな話は「私たちの田村くん」のころからちょっと苦手な部分があるので若干苦しい部分も。ただ、それでも、文化祭のクライマックスに重なるラストの怒涛の盛り上がりっぷりには目頭を熱くしました。あぁ、もう、走れ若者!
全体としては、キャラクターの考えてることとか人間関係だとか、そういう部分の細やかさが好印象。父親を求めながらこれまでの経緯から信じることのできない大河、父親という存在を持たないことから大河と父親の間を余計に取り持とうとしてしまう竜児、大河の親友として複雑な想いを抱いた実乃梨、自分の生き方を定めて一足先に大人になっていく亜美。北村の心理だけは一向に読めないのは置いておいて、今まで描いてきたものがあるからこその、この微妙な心の動きは非常に良かったなぁと思います。
そして思ったことは、とらドラ!の世界はどんなに温い関係性の中に大河と竜児がいたって、そこに安住する時間の止まったユートピアじゃなくて、確実に変わっていく世界なのだということ。みんな大人になり、成長していくのだということ。考え方も、キャラクター達の関係性も、少しづつ、でも確実に動いていくということ。
決して永遠ではないその中で、こんなに苦味の残ることがありながら、何度だって立ち上がれる強さと、力いっぱいお互いを支えられる友情パワーを見せつけてくれたらもう、光り輝く10代の姿に力いっぱいのエールを送りたくなって当然じゃないですか。高校の文化祭という何度も味わえない瞬間という舞台設定も、一瞬のきらめきを見せつけるには最高だったと思います。
そんなことを思いながら、自分自身のどこかへ行った青春に若干のやるせなさを感じ、片目で独身(30)を見て安心しようとする私は現在20代。
満足度:A−