F1 ブラジルGP

キミ! キミ! キミ!
2戦を残して17ポイント差という絶望的な状況を、鮮やかにひっくり返した驚異の大逆転。2007年度F1ワールドチャンピオンは、フェラーリキミ・ライコネンでした。
いや、もう、本当に言葉にならない。私はライコネンのファンで、どうにかして勝ってほしいとは思っていたのですが、さすがにこれは無理だとあきらめかけていただけに、嬉しさもひとしお。
とにかくこのレースは、複雑なパワーバランスの中に置かれたアロンソ、ハミルトンに対して、勝つしかないというシンプルな状況にあるライコネンという、失うもののない追うものの強さが表れたかと。
スタート直後、アロンソを意識してだと思われるミスを犯して後退したハミルトンに、ここ数戦で彼にのしかかっていたプレッシャーの大きさを見ました。前半戦あそこまでの安定感を誇っていたハミルトンが、まさか終盤に来てここまで崩れるとは。さらに今回は抜群の信頼性を見せていたマクラーレンのマシントラブルという要素が重なり、中国でのチームのミスも合わせると、最後の最後ですべてがおかしくなってしまったような感じ。ルーキーがチャンピオンシップに挑むということの難しさをまざまざと見せつけられたここ数戦でした。
そしてこのレースの主役はフェラーリの二人。スタートから1-2で抜けだし、マッサが先にピットしたところでライコネンがスパート。きっちりと順位を入れ替えての1-2フィニッシュはまさしく完璧なレース。特に今回は、マッサのアシストが素晴らしかったです。
そしてライコネンフェラーリのマシンに慣れた終盤戦、特にここ5戦位の強さはトップ4の中でも群を抜いていました。とにかく速くて、そして強いライコネンを見せつけてくれた感じ。ミハエルが取り戻せなかったドライバーズタイトル、移籍初年度で見事に奪い取りました。お見事!
そしてアロンソも、チームとの不和をもはや隠そうともしない現状で、それでもこれだけの走りを見せたのはさすがにチャンピオンだと思います。来年どこで走るのかはわかりませんが、いいマシンにさえ乗れれば、来年のチャンピオン候補であることは間違いないでしょう。

その後ろでは、ウィリアムズのロズベルグBMWの2台を制しきる活躍で4位に。今年のロズベルグは随所に印象に残る速さを見せて、これはちょっと凄いかもと思わせるに十分。来年も楽しみです。そしてBMWクビサハイドフェルドも最後までいい走りを見せていました。
そして7位に猛追を見せたハミルトン。8位にトヨタトゥルーリが入って最終戦をポイント獲得で締めくくりました。

期待された中嶋一貴は良い走りは見せたものの、予選で19位に沈んだことが響いて10位。またピットクルーを撥ねるなど経験不足が露呈してしまった印象。金曜日とレースで速さはきっちりと見せつけただけに、もう少しGP2で経験を積んでからのF1昇格が望ましいのかなと感じます。まだ若いですし、才能は間違いなくもっていると思うので、尚更急いでほしくないのです。

何はともあれ、長かったシーズンもこれにて閉幕。ルーキーがもたらした衝撃、トップ4の熾烈なバトル、政治的な事件、チーム内不和、そして劇的な幕切れと盛りだくさんの2007シーズンでした。なにより、ここまで高度に技術化されたF1でも、最後は人間らしい闘いになるということが感じられて、なんだか嬉しかったです。表彰台でシャンパンを飲みまくった上に、優勝カップを忘れてシャンパン片手に帰っていくライコネンとか!