クジラのソラ 04 / 瀬尾つかさ

クジラのソラ〈04〉 (富士見ファンタジア文庫)

クジラのソラ〈04〉 (富士見ファンタジア文庫)

――あんたたちが思うほど、わたしたちは捨てたものじゃない。

無軌道とも思える勢いで風呂敷を広げてどうなる事かと思ったシリーズも、最終巻は絶望から立ち上がり、強い気持ちと仲間たちの力で駆け抜ける素晴らしい締めくくりを見せてくれました。それでいて、日本、世界、宇宙と果てしなく広がっていったスケールも、雫たちの物語の中に活きてきて驚き。
細かい設定がどうのとか、意味とか正しさとかは考えだすとよく分からないのですが、正直なところあまり気にならなくて、たとえそれがエゴであっても、真っすぐな気持ちでぶつかって言い争ってでもお互いの道を切り開いていくキャラクター達の姿に気持の良い清々しさを感じました。その辺り、凡人で難しいことは分からなくても、自分の信じるもののためなら人一倍強くなれる雫という主人公の存在が大きかったかなぁと。信念と根性と絆。まさにスポ根。
それにしても見せ場の多い最終巻。絶望の淵から這い上がっていく過程、出会った人々の言葉、様々な人々が見せる想い、そしてラストへ。なんだかいちいちグッと来る場面が多くて、何度か涙腺が緩みました。
あと、このシリーズはキャラクターも良かったのだなぁと実感。特にこの巻の智香にはやられっぱなし。細かいことは気にしなくて、でも気配りはできて、自分のペースに巻き込んで周りを幸せにしてしまえる本当に良い子。ゲームの中での

「――信頼しているわ」
「あたしはいつでも雫を信じているぜ」
「うん、知ってる」

のやりとりにはゾクっとくるものがありました。智香はマイベストキャラクターのかなり上位に食い込みそうです。
シリーズで見ると、途中の展開に置いて行かれそうになったりもしましたが、SFな雰囲気の中での真っすぐなスポ根的物語がハマっていて面白いシリーズだったと思います。この作者の次の作品にも期待大です。
満足度:A