れじみる。 Junk / 藤原祐

れじみる。Junk (電撃文庫)

れじみる。Junk (電撃文庫)

おまけ&後日談。
本編が完結しているのでファンアイテム的な色合いも強い1冊ですが、後日談に当たる「ありがと、ばいばい。」だけでも、本編を読んできた人には価値があるかと。性格がガラッと変わってしまった蜜と、ぐっと人間らしくなった硝子と、大人の格好よさを見せるネア。冒頭のマンガを読んだだけでちょっとうるっときていたのに、この展開はあまりに卑怯。失ってしまったものを胸に前を見て歩み出す姿に、思わず涙がでてしまいました。
藤原祐という作家は、"電撃の黒い太陽"などと呼ばれるくらいに、鬱展開が特徴的な人ではあると思うのですが、むしろその真骨頂はこういう切ない話なのではないかと思います。歪んだ設定の上で悪趣味な物語を描きながらも、その中で見せる無防備な程真っすぐで切ない話が素敵です。「れじみる。」の里緒の話とか、本編7巻で見せた姉妹愛とか、やっぱり直球で好み。これはある意味ツンデレ小説なのかもしれません。
他の短編では、既出のものを収録した1話はちょっと浮いている気がして微妙だったのですが、2話、3話はバカ話ながら先の話を知っているからこその寂しさみたいなものがあって良かったです。3話の温泉盗撮ドタバタ劇などは最高だと思います。そして、自分は殊子、蜜姉妹の関係が凄く好きだということも再確認。
巻末の番外編2本は、ひたすらにやっちゃった感が漂っていますが、このやっちゃった感が作者萌えを誘発していてむしろしたたかな感じ。メタネタで言い訳しても、困ったことになんだかアリな気分にさせられてしまうのです。
イラストは最後までお見事。シリーズ通じて、小説とイラストのコラボレーションとしては最高級のものだったと思います。
満足度:A−