とらドラ6! / 竹宮ゆゆこ

とらドラ! (6) (電撃文庫 た 20-9)

とらドラ! (6) (電撃文庫 た 20-9)

傑作。
青春が、爆発しました。
生徒会長選挙が迫る中、突然髪を金髪に染めグレた大本命北村。北村を心配する竜児に大河、甘えていると突き放す亜美、超然としたまま意に介さずな態度のすみれ、どこか様子が変な実乃梨。それぞれの想いは交錯して、暴走して、時にぶつかりあって。
キャラクターたちが単純で記号的な存在ではなくて、悩み迷いそして生きている血の通った人間であるということを強く感じさせるのが、この作品の特徴なのかなと思います。お約束パターンや空気の読めすぎた展開の魅力というのももちろんありますが、危なっかしく一筋縄ではいかないキャラクター達がもがきながらも一生懸命青春しているのは素晴らしいと思うのです。
誰も彼も自分の中に処理しきれない何かを抱えて、処理できないままに怒ったり、泣いたり、悲しんだり、苦しんだり。都合よく想いなど伝わらなくて、すれちがって傷つけあって、それでも関わることは決して止めたりはしない。人間なんてそんなに単純じゃなくて、物事だってそんなにシンプルじゃなくて、まだ高校生のガキは賢くなんか生きられない。それでも、やっぱりこういう生っぽい感情を抱えるこいつらは魅力的。迷いはすれど、決して後ろ向きではない辺りが良いのかもしれません。
そして、そんな鬱積したそれぞれの感情が爆発するクライマックスは圧倒的。ラスト数ページが残した衝撃みたいなものが凄かったです。
いつまでも微温湯に浸ってはいられない、ということを一つの区切りで示したこの巻。実乃梨が竜児に見せる態度の変化を筆頭に、微妙に変わりつつあるそれぞれの感情が複雑に絡み合ってどんな物語が紡がれるのか、続きが本当に楽しみです。