ひぐらしのなく頃に 祟殺し編 1,2巻 / 竜騎士07・鈴木次郎

今までに読んだひぐらしの話の中でベスト。
ひぐらし第3話となる祟殺し編は沙都子編とも言える物語。ひぐらしに登場するキャラクターは、多かれ少なかれ皆何かしらの問題を抱えているというのは分かってきていたのですが、沙都子のそれは「児童虐待」という強烈なものでした。
複雑な家庭事情、ダム誘致や祟りといった雛見沢固有の事情、失踪した大好きな「にーにー」悟史。今までの話での悪ガキな沙都子の様子からは想像もつかなかった過酷な現実を背負って、余りにも小さな体で自分が強くあらねばと想う痛ましさ。
沙都子好きを公言している鈴木次郎の描く前半の沙都子は意地っ張りで強がりで頑張り屋で本当に魅力的で、だからこそ後半に進むにつれて明らかになる事実を辛く感じます。そしてそれ故に、圭一が取った一連の行動に対しても、どこか惹き込まれるような感覚が味わえるのでしょう。
その圭一が想いを定めてからの後半は、怒涛の勢い。暴走していく思考と行動に、それに呼応するようにして異様な姿を見せる雛見沢という場所に、翻弄され引き込まれ、そしてあのクライマックスへ押し流される感覚は鳥肌もの。マンガの中に込めた作者の執念というか、何か鬼気迫るのもを感じました。コミカライズとしてもこれは素晴らしい出来なんじゃないかと思います。
増える足音、大災害、祟りといった要素は、これだけじゃちょっと分からない感じ。ただ、圭一は勿論レナや魅音もこれまでのシナリオで狂気を見せてはいますが、他のシナリオでの行動を見ていると日常の崩壊を望んではいないというか、むしろ防ごうとしているように見えます。異物として描かれる大石も、祟り関連の事件に関して執着を持っているだけに見えますし。この辺り、ちょっとしたボタンの掛け違いが、ここまでに起こったそれぞれの惨劇を生んでいるのかなという気もしました。