おと×まほ / 白瀬修

おと×まほ (GA文庫)

おと×まほ (GA文庫)

こんなに可愛い子が女の子のはずがないじゃないですか!
そんな言葉も一部には定着して、ここ1,2年でブームらしきものを見せている女装少年もの。そこに魔法少女という直球勝負を仕掛けてきました。
「男の子で魔法少女」というのは字面から矛盾している訳で、普通に考えたら魔法少女ものパロディの一環という扱いになるのでしょうが、この作品の場合はむしろこれが正しいのだと言わんばかりの本気で真っすぐな姿勢が素敵です。そしてまた、女装っ娘な彼方が可愛いという。
見た目は女の子で、押しに弱く流されやすくて、でも地の部分は結構荒っぽく男らしかったりする彼方のキャラクターと、無理矢理女装魔女っ娘に変身させられて、敵と妙に肉弾戦なバトルを繰り広げるというコンセプトだけで突き抜けている感じ。設定が設定だけに読者は選ぶのでしょうが、作者の描いたイメージへのシンクロ率がやたらと高かった私は、序盤から中盤にかけては非常に楽しめました。
ただ、ノンブレーキな妄想で突っ走っている印象が強くて、最初に受けたインパクトが薄れてくるとちょっと苦しい部分が。妄想垂れ流し気味にイベントが詰め込まれすぎていたり、彼方の迷いや決意の描写が薄く感じたり、暴走して上滑っている感じもあったりで、ストーリーや構成の面ではのりきれない部分がありました。この辺りがこなれてくると、もっと面白くなるんじゃないかなぁと思ったりも。
それでも、理想と妄想と背徳感をごちゃまぜにしたみたいなもやもやした感覚を与えてくれるこの設定は魅力的。まだ見せ場の少ないキャラクターも多いですし、続きも読んでみようと思います。