サージャント・グリズリー / 彩峰優

サージャント・グリズリー (ファミ通文庫)

サージャント・グリズリー (ファミ通文庫)

第9回えんため大賞特別賞受賞作。
くまー。
ある日やってきた転校生。頭はハイイログマのぬいぐるみ。体はマッチョで軍服姿。性はグリズリーで名は軍曹。強引で豪快ですごく強くて、でも人付き合いには不器用。
そんな漢らしい軍曹は実は女の子で、しかも主人公の準以外には「クールな美少女」に見えているらしい……。
そんなシュールな設定で始まる物語は、そのまま出オチでは終わりませんでした。その後もやっぱり頭がハイイログマのぬいぐるみなグリズリー一家や下っ端ブルドックに軍曹の旧友であるサーモンなどが登場してノンストップ。頭がキノコでオカマの殺し屋なテングダケ・プランクトンにはもはや空いた口が塞がりません。意味が分からないにも程があります。
しかも準がいくらツッコミを入れても総スルーされるので、ボケがボケっぱなしのまま最後まで駆け抜けて行きました。ここまでくるとアホらしいやら感心するやら。
そんな強烈なキャラクターながら、話自体はまじめにやっているギャップがまたシュール。裏の世界の何がどうしたとか、財閥がどうしたとか、戦争がどうしたとか、シリアス気味な話をしていても、やっぱりクマのぬいぐるみなので緊張感に欠けます。どちらかというと、そういうキャラクターが真面目にバトルしたりしているのを楽しむものなのかもしれません。
ただ、そういう独特な部分以外はちょっと微妙な感じ。そこを評価する作品ではないとは思うのですが、ストーリー自体はかなりグダグダ気味で途中からどうでも良い感じになってしまうのがなんとも。文章もちょっとこなれていなくて、特にバトルになると読み辛さを感じました。
でも、その辺りを差し引いても、独特の空気を持っている作品ではありました。一度ツボにハマったら抜けだせなくなるタイプなのかもしれません。