SH@PPLE ① / 竹岡葉月

SH@PPLE〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)

SH@PPLE〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)

ふわふわしてこそばゆいラブコメでした。
双子の姉弟である舞姫と雪国がお互いの学校を交換して、片や超お嬢様学校である青美女学院、片や平凡な共学中学校である空舟五中へと通うことになるお話で、二人の想いや行動が少しずつ周りに影響を与えていく様子が描かれます。生徒会長「若光の君」としての毎日の中でお嬢様学校の人間関係に疲れてしまった舞姫へを気遣いつつも、憧れの蜜に会いたいという邪な思いも持っていた雪国なのですが、青美に行ってからの優しさと真っ直ぐさに溢れた行動を見ているとそんな邪さなんて全然感じさせないのがすごいです。まぁ、生徒会長とソロリティの「ローズロワイヤル」の一員という壁を越えて、蜜とはしっかり仲良くなっていたりするのですが、そこに下心を感じさせないピュアさが眩しい。
逆に舞姫の方もお嬢様学校とは全然違う世界の中で、女の子はこりごりと思いながらなぜかモテてしまったり、やる気のない生徒会にショックを受けたり。中でもSECというダメ人間スレスレな集団との関わりの中で、彼らの意外な一面を見て奮起する辺りは、舞姫の気の強さがうまく働いた感じでした。
そんな2人のやってきたことが交差するそらご祭、そして雪国と蜜の関係はどうなるのかというクライマックスまで完成度が高くて面白かったです。ただ、個人的にここまでピュアでスイートでフワフワした話をやられると、どうにも眩しいというかこそばゆいというか居心地の悪さも感じてしまったり。私の心が汚れてるだけな気がしてなりませんが。
ミステリー要素が物語の中で割と大きな意味を持つのですが、なんかちょっと全体の雰囲気から浮いてる気も。S・ザ・リッパーの謎を無理に解き明かす必要はないんじゃないかなぁと。というかこれ、もしかしたら富士ミス用に書かれたものなのかも。