AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜 / 田中ロミオ

AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)

「私は頑張れない」
「何で頑張れないんだよ！」
「狭量だから」
「誰が」
「世界が」

これは最高の学園ラブコメ。私のストライクゾーンど真ん中を直球で撃ちぬいていきました。いやはや、田中ロミオは凄い。
高校デビューを果たして普通の高校生として順調なスタートを切った佐藤一郎が、深夜の学校で出会ってしまった「魔女」佐藤良子。自分の世界を作り上げ、学校に青いローブ姿来るわ、他の生徒から「見えない」設定のためにガン無視するわで浮きまくる良子のお世話係を担任から命じられた一郎の苦難の物語にして、良子と一郎の青春ラブコメにして、つまらない世の中にぶっぱなす妄想の弾丸。
クラスの半数を占める妄想戦士たちに何故か懐かれてイタい妄想垂れ流しを聞かせ続けられたり、良子の電波娘丸出しな奇行につきあわされたりして、目指していたはずの普通からどんどん遠ざかっていく一郎ですが、面倒見が良くてやる時はやって何気にコミュニケーション能力が高かったりする辺り普通にカッコいいです。サブタイトルに偽りなしなクライマックスシーンの痛カッコ良さと言ったら！
そしてハタ迷惑な電波娘良子の方も、演技の向こうに時々見える人間らしい感情の揺らぎが可愛いいったらないのです。
そんな感じで軽快な語り口に息を付かせぬ展開でグイグイと引っ張られる作品。やや過剰に特徴づけられたキャラクターたちのアクの強さも、ふいに現実を見せる緩急の付け方も素晴らしかったです。特に後半の展開の盛り上がりっぷりは文句なし。
テーマ的にも、現実との折り合いの付け方とか、痛々しい妄想とかをネタにしつつ、最後の着地点がこれって言うのがまた良い感じ。この世界の中で、そうやって生きていけるんだという希望。きっとこの世のすべては妄想から始まったに違いありません。
しかしなんというか、クラス内ポリティクスの描写は極個人的に引き攣り笑いが……。仲良しグループのでき方とか、席替えとか、学生時代の色々忘れていた（忘れていたかった）ことを思い出させてくれたような。
まぁ、それはそれとして最高に楽しかったです。大好きな作品と大好きな作家がをそれぞれプラス１されそうな1冊でした。