アカイロ/ロマンス 少女の鞘、少女の刃 / 藤原祐

容赦がない、というかもはや悪趣味なこの構図はさすがとしか。
ブコメっぽく始まった序盤に、学園もの+伝奇ものという構成なのかなと思っていたら、あっという間に日常は崩れ、気がついたらもはや後戻りができないところにいるという恐ろしさ。圧倒的な非日常に蹂躙されていく感覚はいっそ愉快です。
物語的にはまだまだ始まったばかりという感じですが、早くも追い詰められた状況のように見えなくもなく。今回敵対した彼女の抱えていた想いが示すように、「鈴鹿」の一族の在り方そのものが、人と関わっていくならばどうしても悲劇を生むような予感しかしないです。でも、異形の者「鈴鹿」であるヒロイン枯葉と、一般人である主人公景介の関係は、追い詰められるほどに輝くような気もしますけど。
そしてこの作品で何より印象的だったのは、その枯葉と景介の出会いのシーン。そこまでで描いてきたものがあっての、「喪着の儀」のインパクト。単純にショッキングなだけでなく、素直に好感を抱けないだけの理由を作りながら、それでも読み進めるほどにヒロインを好きになっていかざるをえないという矛盾をはらんだ構図が素敵だと思います。
この1巻がスタートだからこそ出てくる何かがありそうで、続編に期待しています。


以下ネタばれ

灰原……。好きになれそうだなと思ったヒロインが、80ページで退場。しかもその体を乗っ取った形の異形の者がヒロインで、灰原の記憶と想いの一部が引き継がれるというのは、なんというか凄い設定だなぁと。そして読み終わってから表紙を改めて見て、一瞬言葉を失いました。いやはや。