神のみぞ知るセカイ 1巻 / 若木民喜

神のみぞ知るセカイ 1 (少年サンデーコミックス)

神のみぞ知るセカイ 1 (少年サンデーコミックス)

2D世界の絶対神降臨!!!

この無駄にカッコいい帯文句と、やっぱり無駄にカッコいい表紙はインパクト抜群。
ギャルゲー攻略のスペシャリストとして落とし神の異名をとり、現実なんてクソゲーだと断言する少年桂木桂馬。彼がひょんなことから悪魔と契約してしまい、現実の女の子に潜む駆け魂を回収するために、現実の女の子を攻略することになるという美少女攻略ラブコメディ。
これまた設定勝ち、というかこれは少年誌的にありなのかと疑問すら感じるお話ではありますが、作者がゲーム好きと語るだけあって桂馬が「攻略」するヒロインは可愛いし、奮闘する桂馬の姿もこれはこれで魅力的で、素直に面白い作品になっているように感じました。
この巻では2人登場するヒロインの造形は陸上をやっている元気娘にツンデレお嬢様とまさしくテンプレ的なのですが、絵は可愛いしキャラクター造形もこなれているしで魅力的。ただ、1人のヒロインにかけるページ数が少ないので、テンプレ的な魅力以上のものはないのが不満といえば不満。ただ、この作品としては次々とヒロインを出した方が正しいような気がするので、一概にどうとも言えないのかも。
でも、個人的にはこの作品で一番魅力的なのは桂馬じゃないかと。現実なんてと言いながら、己のゲーム理論を頼りに奮闘する姿は一見ダメな人でよく考えてもダメな人なのですが、何故か妙にカッコ良かったり、揺らいだり照れたりする様子が妙に可愛かったりするのです。
そして「妹」として桂木家に居ついた悪魔エルシィの健気な真っ直ぐぶりを見ていると、桂馬はエルシィとくっつけばいいのになぁと思ったり。攻略した女の子は記憶をなくすという、桂馬にとってラッキーなのかラッキーじゃないのかよくわからない設定によって今のところは何事もなさそうですが、この先もしもラブコメ的展開があるのなら、エルシィに頑張ってほしいなと思います。
それにしても、「ゲームの中の女の子にしか興味がなかった男の子が現実の女の子に好かれるために奮闘する話」と書くと健全そうなのに、その現実が読者から見るとやっぱりギャルゲーの世界そのものだという二重構造は、なんというかもやもやしたものが胸に残る感じが……。