嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 6巻 / 入間人間

体育の授業中、体育館にやってきた男。手にはライフル。安っぽい動機で引き起こされる惨劇。そしてはじまるみーくんの日常。
みーまー6巻は、今までに起こってきた事件の関係者たちの今の姿を描いた章を間に挟みながら、みーくんとまーちゃんの巻き込まれる体育館での事件が描かれます。
なんというか、もうこの上なくみーまーなのですが、それ以上にコメントが難しいという不思議な小説。嘘と嘘で幸せを塗り固めたような世界。みーくんという存在の基盤の危うさ。もはや当たり前になりすぎて、それだけのことでしかないような狂気。リアリティなんか無くて、薄っぺらくて、でもどこまでも切実な。
みーくんが巻き込まれる事件はとんでもない出来事のはずなのに、その合間に挿入されるキャラクターたちのどうでもよい日常とほとんど等価に見えてしまうようなこの気持ち悪さがみーまー。泥のように重たく、ずぶずぶと沈んでいくような気だるい空気がすべてを支配していて、でもその中にどうしようもなく逃れられない何かがあって。
そしてただ続いていくだけの日常と非日常。その中で誰かの存在がぶつりと切れたって、ただそれだけのことのような、続いていることも続かないことも等価であるような。
この作者の人が描く、空気というか感覚みたいなものは、どこまでも私に相性が良くて、読んでいて本当に引きずり込まれていくような、頭の中を埋め尽くされるような感じがします。しばらくの間脳内モノローグが全部みーくんの戯言テキストで出力されたりとか。凄く良くわかって、わかるからこそ気持ち悪くて、でもその気持ち悪さが癖になってたまらない、みたいな。
この構成、この結末含めて、こんなもの誰も書けない、というか書けたとしても誰も書かないだろうと思うような小説でした。
だから、大好き。嘘をつく意味はもうないでしょう。