ひぐらしのなく頃に解 第三話〜皆殺し編〜(上) / 竜騎士07

ひぐらしのなく頃に解 第三話~皆殺し編~(上) (講談社BOX)

ひぐらしのなく頃に解 第三話~皆殺し編~(上) (講談社BOX)

惨劇を繰り返す世界の中で、運命に抗う力が持てるなら。
コミカライズ版で追いかけてきたひぐらしですが、ここにきて待たされるのが辛くなってきたのでこの先は小説版で読み進めることにしました。ゲームも持ってはいるのですが、ノベルゲームがどうしてもダメなようなので。
そんな訳で皆殺し編。「別の世界の記憶」を取り戻した罪滅し編から一歩踏みこんで、一つ上の次元から明らかにされる雛見沢を縛るルール。それを語るのは、いくつもの惨劇で殺されてきた高次の存在としての梨花。世界の構造が明らかになった時、ひぐらしは惨劇に巻き込まれ、その謎を追いかける物語から、惨劇を起こさないために闘う物語へと姿を変えます。
100年以上を繰り返しの中で生きる梨花梨花にだけ見える「オヤシロ様」こと羽生をメインに、罪滅し編で運命に打ち克った圭一の姿にもう一度頑張ろうと決めた梨花が、運命に立ち向かう様子が描かれる上巻。何度も訪れた惨劇の世界を招いたディスコミュニケーションを克服し、少しづつ明るい未来に進んでいこうとする中で現れた鉄平という災厄。それに対して、今度は正しい手段で立ち向かおうとする部活メンバーたちの姿は、これならもしかしてという期待を抱かせてくれます。
そしてこの話の最大の魅力は梨花のキャラクターかなと。何度も繰り返す惨劇の世界に囚われ、挑戦して失敗して諦めて、それでも掴んだ少しの希望に賭けて、運命に抗おうとする姿。期待が高ければそれだけ裏切られた絶望は大きく、長く長く続いた苦しみは自嘲的な言葉を吐かせて、それでも希望を捨てられない様は、痛ましくもあり、でもそれだけに魅力的でもあると思います。個人的に精神年齢が高い子供キャラが好きだというのはありますが、それを差し引いても魅力的な主人公なのではないかなと。
相変わらず文章は上手いとは思いませんし、特にゲームがベースなだけあって会話文が誰の言葉なのか分からない部分が多々あったりもするのですが、読み始めると止まらなくなる吸引力はさすがの一言でした。
それにしても、あれだけ得体の知れない恐怖の象徴として描かれてきたオヤシロ様が、あうあう言いながらジタバタしている甘いもの大好きな女の子というのはなんというか……。私の場合羽生というキャラクターをもう知ってしまっていたのでそこまで驚きませんでしたが、リアルタイムで追いかけていた人は相当驚いたのではないでしょうか……。