PUNISHER 1〜3巻 / 佐渡川準

PUNISHER 1 (少年チャンピオン・コミックス)

PUNISHER 1 (少年チャンピオン・コミックス)

PUNISHER 2 (少年チャンピオン・コミックス)

PUNISHER 2 (少年チャンピオン・コミックス)

PUNISHER 3 (少年チャンピオン・コミックス)

PUNISHER 3 (少年チャンピオン・コミックス)

無敵看板娘」の佐渡川準の新作は王道ファンタジーもの。
父親を何者かに殺され村を離れて旅に出た少年アルトと、死神になることが夢と語る少女ミルキィの出会いから始まる物語は、まさに王道なファンタジーの様相。たどりついた街でのイベントをこなしながら、人づてをたどって旅を続けていく様子はRPGゲームを見ているような感じがします。
主人公のアルトはいわくありげな剣を持ち、特別な力を持ちながら、夢も目的も持たずに旅を続ける少年。何かを為せる力がありながら、全てを諦めてしまったかのような感じすら受ける彼の前に現れたミルキィという少女の存在は、彼に大きな変化をもたらしそうです。
そしてそのミルキィは陽気で前向き、直情型とアルトは反対の性格をした少女。その少女が何故独りで、しかも世界を滅ぼしかけたとすら言われる死神を目指して旅しているのか。何故魔法が使えるのか。重さを感じさせない普段の様子と、自らの過去に触れさせまいとする様子のギャップが膨らませるそういった疑問符は、3巻のラストである程度まで明かされるのですが、このミルキィの過去話がかなり壮絶なもの。それを考えてそこまでの旅路を読み返すと、あの軽い態度のなかにどんな想いがあったのか、彼女にとって目の前に現れたアルトという少年がどれだけ救いとなったのか計り知れないものがあると思います。
そしてアルトを追いかける自称ライバルの少年カッツや彼らを見守る変人な領主ウォーゼル、優しく静かな人に見えてかなり怖い人な気がしてならない王女スキなどサブキャラクターも魅力的。特にアルトに突っかかってくるカッツの姿には前作の不遇なキャラクターの姿が重なって涙なしには見ていられない感じ。力に任せて人に迷惑をかける悪ガキな感じなので、もう少し痛い目を見ればいいかなとも思いますが。
そして、そんな物語を魅力的なものにしているのは、この作者のマンガの巧さかなと。可愛い絵から迫力のある絵まで描けて、アクションシーンもスピード感があります。そして何より、見せ方が上手いなぁと。19話でアルトがミルキィに返した言葉と、それを受けたミルキィの表情とか、22話のミルキィ覚醒までの迫力とか。そういう部分の地力があるから、オーソドックスな物語をドキドキするような魅力的なものに見せてくれるのかなと思います。ただ、デザインに関してはもう少し今っぽくした方が人気が出るんじゃないかなと余計なお世話なことを思ったりも。
なんにしても旅はまだ始まったばかり。ミルキィの夢がそういうものであるのなら、これは2人にとって、いったい何を目指していく旅なのかすら分からなくなるはずで、そこにまずは2人の理由を見つけてほしいなと思います。