MA棋してる! 1巻 / 三浦良

MA棋してる!(1) (富士見ファンタジア文庫)

MA棋してる!(1) (富士見ファンタジア文庫)

「6八玉、7八銀、5八金……9八玉、8八銀、7九金……
 あなぐま囲いっ!」

上の引用は魔法の呪文です。あなぐま囲いは防御魔法。守りが堅い。
将棋魔法という斬新すぎるアイデアをぶつけてきた魔法少女もの。?マークが頭上に浮かぶあらすじを読んで、敢えて際どい領域を狙ってきたこのワクワク感に身を任せて読んでみました。
いきなり「将棋魔法」と言われるとまるで変な小説のようですが、基本はお約束をきっちりと踏襲した魔法少女もの。大人と関わる機会が多いためにちょっと大人びた性格をした将棋好きの少女奏が、異世界からやってきた俗物的でお金に汚いソフィーと出会って、という導入。ソフィーの姿はオカメインコになっていたり、巻き込まれるままに魔法の練習を始めて、しかも妙に才能があったりと実にお約束。そしてプログラミング言語の魔法を使うライバルの魔法少女が登場して望まぬ争いが発生、でも最後には、みたいな所まで実に安心して読める感じ。
年に似合わず落ち着いた奏の性格と、魔法少女ものらしいフワフワして甘そうな雰囲気が合わさって、なんだか読んでいて微笑ましい気持ちになってきます。その反面、熱さや刺激を求めると物足りなく感じるかも。個人的に魔法少女と言われると某魔砲少女アニメの印象が強すぎて、このゆるい感じの雰囲気には逆に違和感を感じてしまったりも。
そしてこの小説最大の見どころは何といっても将棋魔法。適当に将棋っぽいだけでもなく、だからと言ってガチガチに設定を固めている訳でもなく、分かりにくくならない範囲で将棋をベースにした魔法理論を構築している辺りはちょっと驚き。棋譜が本当に呪文のようで、これは確かに将棋の魔法としか言いようがないという感じになっています。ただ、この部分を楽しむためには将棋の知識的に、駒の動きと基本的な戦法を知っている必要はあるかも。何も知らないとちょっと苦しいものがあるかもしれません。
そしてこの小説、将棋魔法使いだけでなくそれぞれの魔法理論を構築して使うスタイルなため、将棋魔法vsC++魔法という異種魔法戦が発生します。この辺り、力技で成立させているのは凄いと思いましたが、さすがにちょっと無理がある気も。細かいルールがどうなっているのかとか、将棋で魔法ってやっぱり無理があるのではと思わなくもない感じがあったり。
そんな感じの魔法少女+αな作品。今後さらに色々な種類の魔法が出てきたときにどうなるのか、期待と不安を半々に感じつつ、次の巻を待ちたいと思います。