.(period) / 瑠璃歩月

. (period) (一迅社文庫アイリス る 1-1)

. (period) (一迅社文庫アイリス る 1-1)

公式でジャンル:百合という驚きの分類をされて話題となった作品。そして読んでそのカテゴライズに納得。
両親を奪ったマフィアへの復讐を誓う警察官のビアンカは、マフィアの取引があるという現場でなんでも屋を名乗る一人の少女と出会う。警察からも追われる身となったビアンカは、ニコラと名乗る少女と共に、ビアンカはマフィアを追いかける、的なストーリー。ですが、むしろ重要なのはビアンカとニコラの関係なわけで。
真面目で真っ直ぐ、暴走癖のあるビアンカと、自由奔放な子供っぽさと裏社会で生き抜いてきた力を合わせ持つニコラ。マフィアを憎む警官と、マフィアに育てられた何でも屋という相容れないはずの二人は、闘いの中で、そしてマフィアを追いかける中で、惹かれあっていきます。
男同士とも、男女間とも違う色合いを持った、女同士の信頼関係というものへの幻想を絶妙についてくるあたりはさすがに百合作品と名乗るだけのことが。ビアンカを振り回すニコラの一つ一つの言動、行動、そしてそんなニコラに心を許していくビアンカの姿、そして2人のちょっとしたやり取りがツボをつきすぎていてキュンキュンとするものがあります。そしてラストの告白までの流れなんかは、ちょっと無理矢理さを感じつつも、条件反射的に悶えてしまうものが。ここまで来ると、もう作者の手のひらの上です。
その反面、ストーリーは2人の関係を描くために奉仕しているものと割り切ったほうが良い感じ。話筋自体はしっかりしているものの、あっさりしすぎているというか、淡々と進んでしまって、ちょっと物足りない印象があります。書き込みが足りない感じで、かなり重い話のはずなのに、シリアスさがあまり感じられなかったりとか。ただ、百合に関しても、禁断の愛とかそういう方面でのシリアスさはないので、軽めの雰囲気がこの作者の作風なのかもしれません。
そんな感じで、女同士の信頼関係やいちゃいちゃしている様子に思わず反応してしまう人にお勧めの小説。ちなみに私は2巻が出たら買います。