GUNSLINGER GIRL 10巻 / 相田裕

GUNSLINGER GIRL 10 (電撃コミックス)

GUNSLINGER GIRL 10 (電撃コミックス)

どう反応すればいいのか分からなくて、ただただ打ちのめされて。
アンジェリカの死が告げる、一期生たちの終わりの時。今回メインで描かれるのはトリエラとヒルシャーの話。ヒルシャーが闘うために存在する義体であるトリエラを、自らの身を挺してまで生きさせようとする理由。その根源となり、トリエラの出自にも繋がる過去が明らかにされます。
ヒルシャーはどうしようもなく過去に縛られていて、それはトリエラの存在そのものがもたらしていること。それなら、義体なんていうシステムがなければこんなことにはならなかったとして、スナッフムービーの撮影のために売られていたトリエラを、なんとかして生かそうとしたラシェルとヒルシャーの行動は、間違っていたのかと問われれば、返答に窮します。それを善意や奇跡という言葉で表現するならば、それはどうしようもなくエゴなのかもしれなくても。
そして、トリエラ自身の話。自分を生かすために自分すら犠牲にするヒルシャーの身を案じ、彼の過去と自分の出自を知り、そして彼に別れを告げ、それでも。「必死に生きて、そして死のう」の言葉に繋がる流れは、それだけを見れば、一人の少女が悩み、考え、行動し、そして一つの結論に至った過程として、そしてお互いにお互いを縛り続け、想い続ける中で行き詰って朽ちていく二人の物語として、魅力的で、感動的です。
でも、そこに挿入される回想が、「愛情」と「条件付け」はよく似ていると語るトリエラの言葉が、読者をそんなシンプルな悲劇の物語に浸らせてはくれません。少女が自ら選んだ結末は、もしかしたら選ばさせられているのかもしれない。彼女は逃げなかったのではなくて、単に逃げられなかったとのだとしたら。
その答えすら与えられないのに、クライマックスシーンでは思わず涙が出るのだから、本当にこれはなんという毒のような物語なのかと。これはもう、ただ凄いとしか言い様がありません。
そんな本篇の雰囲気に反してポップな雰囲気のイタリアガイド冊子は、作者が本当にイタリアが好きなのだと実感できる感じ。あちこちに描かれたデフォルメキャラが賑やかでかわいくて、思わず大切にしたくなる愛らしい冊子なのですが、本編を考えればこれはこれで皮肉だなぁという気も……。