- 作者: 赤井邦彦
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/10/10
- メディア: 文庫
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日本のF1ファンが夢にまで見た国産F1チームは突然に産声を上げ、F1という大舞台でたくさんの私たちに夢を与えて、そして力尽きて表舞台から消えて行きました。この本は、そのF1チーム、スーパーアグリの軌跡を関係者の証言を交えながら追ったドキュメント作品です。
スーパーアグリのF1参戦発表自体、F1ファンから見れば冗談のような出来事だったのですが、その裏にあった出来事がここまで壮絶だったとは。莫大な参戦資金を得るために奔走した記録は、フィクションよりもさらにドラマチック。これだけ厳しい現実を前にして、それでも逃げなかった、そして2006年バーレーンGPに車を並べた鈴木亜久里と言う人が、如何に他の人にはできないことをやってのけたのかがよくわかります。正直、この賭けは分が悪すぎて、常軌を逸してると言ってしまっても過言ではないと思うのです。それをねじ伏せた情熱は、F1ファンとしては惚れざるをえません。
そして佐藤琢磨という存在の大きさ、ホンダとの複雑な関係。F1はスポーツであり、ビジネスであり、政治であり、何よりも人の為すものであるということがよくわかる出来事の数々は、まさしく波乱万丈。万策が尽きるまでの2年半、資金難に追われ続けたその姿に感じるのは、日本という国のモータースポーツへの理解の低さと、魑魅魍魎が蠢くお金の世界の怖さ。
それだけに、その境遇の中でも前を向いて闘い続けたスーパーアグリチームの2007年に獲得したポイントはどれだけ特別なものであったのか。闘い続けたチームスタッフたちの姿には、胸が熱くなるものがあります。
どんなに言葉を尽くしても、日本のF1ファンとしてのこのチームに対する想いは語りきれないかもしれないけれど。今はただ、夢をありがとう、お疲れ様という言葉を。翻弄され続け、もがき苦しんだ中で、この上ない輝きを見せてくれたこのチームの活動を、私はきっと忘れません。