イエスタデイをうたって 6巻 / 冬目景

イエスタデイをうたって 6 (ヤングジャンプコミックス)

イエスタデイをうたって 6 (ヤングジャンプコミックス)

久しぶりの新刊。そして今回も素晴らしかった!
リクオが写真スタジオで正社員となり、そのことで少しずつ変わっていく人間関係。榀子とリクオとハルの間にある微妙な何かの動きを、決して表面上で大きな変化は起きないながら、止まることなく繊細に描いていて大変素晴らしかったです。
コンビニのバイトがなくなったせいでリクオと自然に会う機会がなくなって、会えないことで悩んでなんだかちょっと卑屈になってるハルも、もう少しで届きそうな榀子への想いを確認しながらハルという存在の大きさも感じるリクオも、そしてリクオと自分と早川家のことを考えて悩んでいる榀子も、流れていく時間の中で皆がもやもやして、次の一歩を踏み出しあぐねている感じが凄く良いものでした。
離れたり近くなったりする距離感、踏み出したり立ち止まったりゆらゆらと揺れる気持ち、変わりたくないという想いとその中でもしっかりと進んでいく時間。こういった要素が本当に絶妙に絡まって、青春でぐるぐるして後ろ向きなようで、でも愛すべきこの雰囲気を形作っているような感じ。個人的にこの作品のこういう空気が大好きです。この巻ではデフォルメっぽい絵が増えていたりと、変に重たくならずにバランスが取れていたのも良い感じ。
話的にも少しづつ動いていて、榀子とリクオの距離感が詰まっていっている感じ。それとは逆にハルとリクオの距離感が離れていくのですが、ハル好きとしてはなんとかハルに幸せになって欲しいと思うことしきり。悩んだり落ち込んだりするらしくないハルもそれはそれで大変可愛いのですが、やっぱり笑顔を見せて欲しいなと。あと、どうやっても報われなさそうな浪も、何か道を見つけてほしいです。
そんな訳で大満足な一冊でした。また次の巻が出るのはずいぶん先になるのかもしれませんが、この作品のためだったらいつまでだって待っています。